写真1●CIOオブ・ザ・イヤー2015を受賞した大林組の三輪昭尚取締役専務執行役員(撮影:菊池 一郎)
写真1●CIOオブ・ザ・イヤー2015を受賞した大林組の三輪昭尚取締役専務執行役員(撮影:菊池 一郎)
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写真2●データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤー2015を受賞したリクルートライフスタイル ネットビジネス本部 プロダクトマネジメントユニットの原田博植アナリスト(撮影:菊池 一郎)
写真2●データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤー2015を受賞したリクルートライフスタイル ネットビジネス本部 プロダクトマネジメントユニットの原田博植アナリスト(撮影:菊池 一郎)
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 東京ビッグサイトで開催中の「ITpro EXPO 2015」の最終日である2015年10月2日、展示会場内アリーナでは、パネル討論「決定!CIO/データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤー2015」が開催された。日経情報ストラテジーは毎年、優れた企業のCIO(最高情報責任者)とデータサイエンティストを表彰している。2015年度の受賞者が決まったことから、授賞式と受賞者による講演も併せて開かれた。

 今年CIOオブ・ザ・イヤーを受賞したのは、大林組の三輪昭尚取締役専務執行役員(写真1)。「私個人というより、業界トップのICT社内普及を目指してきた会社全体の取り組みが評価されたもの。全社が一丸となってICT導入に挑戦したことが、今日の受賞につながった」と語った。講演では、同社のICT活用事例として、現場でのiPadと、BIM(ビルディングインフォメーションモデリング)などの活用について触れた。

 iPadについては、2012年に建設業界の先駆けとして、現場担当者に3000台のiPadを一斉配布。図面や資料データの閲覧などに利用している。クラウドサービスとも連携させ、台数も5700台に増えているという。「以前のように、紙だと重くなりがちな資料や図面を持ち歩く負担をなくせた」と、三輪氏は説明した。

 BIMは、3次元建物モデルに資材のコストなどの管理情報を加えて、設計・施工に必要な情報を一元管理するシステムのこと。完成イメージや設備の干渉度合などを施工前にチェックして改善などにつなげている。2010年から活用を始めて、2015年度には自社で設計施工を担当する案件への適用率を100%にすることを目指している。

 また今年のデータサイエンティスト・オブ・ザ・イヤーは、リクルートライフスタイル ネットビジネス本部 プロダクトマネジメントユニットの原田博植アナリストが受賞した(写真2)。シンクタンクやIT関連会社などを経て今日に至る原田氏は、アナリスト一筋のキャリアを積んできた。

 同氏は講演で、アナリストとしての自身の経歴を紹介した。シンクタンクでは、バイオメトリクスや電子ペーパーなどについての白書作成に、基礎技術の段階からかかわってきた。IT関連会社では、Webマーケティングを担当。ユーザーがWebページのどこを見ているのかを定量的につかみ、改善につなげる仕事を手掛けた。「ここ最近は、オンラインにとどまらずオフラインの行動分析にも関心が集まってきている。ネット上の情報でユーザーの感情もとらえることができればと考えている」と語った。

 講演後、パネル討論が開かれた。このなかで、大林組の三輪氏はiPadの社内浸透がスムーズに進んだ背景を「新しいICTへの抵抗感が少ない現場の中堅層にまず配布し、その後所長などが使うようにしたことで、うまくいったと思う」と振り返った。また経営トップの理解もあったことに言及。「現在の社長(白石達氏)がICTの社内戦略を担当していた。経営層にICT普及のけん引者がいることも成功要因」と分析した。

 リクルートライフスタイルの原田氏は、データ分析を企業の競争力につなげるうえで重要なこととして、組織間の調整力の重要性を説いた。「データサイエンスをビジネスに生かすには、異なる部署の担当者との調整も必要になってくる。そういった対話や調整をするスキルも含めてデータサイエンスであるという意識を持って、これまで仕事をしてきた」と明かした。

 今後の取り組みについて、原田氏は、「若い人のライフスタイルを見ると、スマートフォンなどの画面を見ている時間が増えている。オンラインとオフラインを連動させたサービスの提供にかかわっていきたい」と話した。三輪氏は、「当社では、スマートシティの実現を見据えて、ビッグデータ解析や需要予測モデルを取り入れたエネルギーマネジメントの仕組みを開発している。これをビジネスに生かしていきたい」と見通しを語った。