写真1●ガートナージャパン リサーチ部門 ITインフラストイラクチャ&セキュリティ バイスプレジデントの鈴木雅喜氏
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写真2●日経コンピュータ/ITpro編集長の中村建助
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写真3●対談のテーマは「デジタル・ビジネス」。ホットなテーマだけに多くの来場者が集まった
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 ―日本企業の70%以上がすでにデジタル・ビジネスへの準備を進めている。静かに大きな変化が始まっている―。ガートナージャパン リサーチ部門 ITインフラストラクチャ&セキュリティ バイスプレジデントの鈴木雅喜氏は、2015年9月30日から10月2日まで東京ビッグサイトで開催された「ITpro EXPO 2015」における、日経コンピュータ/ITpro編集長の中村建助との対談「今、デジタルへ挑戦の時」の中でこう語った。

 冒頭、鈴木氏は、中村との対談が3年前のITpro EXPO 2012から毎年行われていることに触れ、「3年前は、デジタル・ビジネスという話をしても、多くの企業の方々が『それって何の話ですか』という反応だった」と振り返った。続けて、「ところが、ガートナーが英、米、独、豪の企業を対象に実施した調査では、『デジタル・ビジネスをすでに始めている』企業が3分の1に達した」と指摘した。

 鈴木氏によれば、デジタル・ビジネスの時代には、「全ての企業がテクノロジー・カンパニーになる」、「全ての部門がテクノロジー・スタートアップになる」、「全ての従業員がデジタルを使いこなすようになる」という変化が起きるという。

 それを受けて、中村は、「つい最近、東京証券取引所が『攻めのIT経営銘柄』を発表した。ようするに、ITが業績をドリブンするポイントになっているということ。この変化は大きい」と述べた。

 変化が進行していく中で、企業はデジタル・ビジネスの時代に何を考え、どう行動すべきかという問いに対し、鈴木氏は、まずは「デジタル・ビジネスを理解すべき」と語った。デジタル・ビジネスとは、「人」、「ビジネス」、「モノ」がデジタル・テクノロジーとデータでつながり、「そこから生まれる新しいビジネスのこと」(鈴木氏)。続けて、鈴木氏は、ITpro EXPOの会場内を見回しながら、「この会場でも、パッと見た感じで今、何が起きていますかと問われても、漠然としていてわからない。ただ、全員がデジタルデバイスを持ち、データをセンシングして分析できれば、会場の気がつかなかった様子も見えてくる。つまり、デジタル・ビジネスの時代には、現実とデジタル・テクノロジーが明らかにする世界との境界が曖昧になる」と指摘した。

 鈴木氏によれば、「従来のITは、情報を集めて計算し、結果を得るところまでだった」という。しかし、デジタル・ビジネスの世界では、情報を「集める」、「理解する」、「判断する」、「行動する」ことが求められる。「これまでは、理解や判断は人間が行っていた。デジタル・ビジネスでは、そこにテクノロジーが活用される。そのときに、新しい情報が生まれてくる」(鈴木氏)という。

 デジタル・テクノロジーが、新しい情報を生み出し、それが既存の製造業や運送業などを様変わりさせることについて、中村もUberやAirbnbの事例を引き合いにだし、「最近では、Airbnbを利用して、東京のタワーマンションでの民泊が流行っていると聞く。これで何が変わるか。タワーマンションを投資目的で購入する人たちに対する利回りが変わるかもしれない。宿泊産業や旅行産業だけでなく、不動産業界にもインパクトをもたらす。住まいに対する価値観も変わるかもしれない」と指摘した。

 鈴木氏も、これを受けて、「今、世の中は大きく変わろうとしています」と指摘。「当社の調査では、日本においても、デジタル・ビジネスに向けた準備を進めている企業が70%を超えました。静かに動き始めている」と述べた。続けて、鈴木氏は、デジタル・ビジネス時代に考えるべきこととして、「企業活動への影響度が大きいことから、IT部門だけの話ではないことを理解しておくべき。まずは、IT部門の新たな役割とは何かを考え、既存のIT効率化を急ピッチで進めることが大切」と語り、対談を締めくくった。