写真1●IoTパネル「IoTの衝撃~日本企業はデジタルによる破壊的な変革にどう立ち向かえばよいか」の会場風景(撮影:菊池 一郎)
写真1●IoTパネル「IoTの衝撃~日本企業はデジタルによる破壊的な変革にどう立ち向かえばよいか」の会場風景(撮影:菊池 一郎)
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写真2●アクセンチュアで執行役員戦略コンサルティング本部統括本部長を務める清水新氏(写真左)と、アイティメディアでエグゼクティブプロデューサーを務める浅井英二氏(写真右)(撮影:菊池 一郎)
写真2●アクセンチュアで執行役員戦略コンサルティング本部統括本部長を務める清水新氏(写真左)と、アイティメディアでエグゼクティブプロデューサーを務める浅井英二氏(写真右)(撮影:菊池 一郎)
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 2014年9月30日から10月2日にかけて東京ビッグサイトで開催された「ITpro EXPO 2015」で、「IoTの衝撃~日本企業はデジタルによる破壊的な変革にどう立ち向かえばよいか」と題するパネルディスカッションが開催された(写真1)。IoTビジネスに詳しいコンサルタントであるアクセンチュアの清水新氏に、アイティメディアのエグゼクティブプロデューサーである浅井英二氏と、モデレーターで日経BPイノベーションICT研究所長の桔梗原富夫が公開質問した(写真2)。

 清水氏は、討論の結論として、手段(モノ)を売る経済から、成果を売る経済へと変わっているということを示した。こうした状況で企業が利益を出すための解として、Uberなどの例を出しながら解説。これまでの産業のように新技術を発明するのではなく、すでにコモディティとなっている分野を選んで、既存のモノを組み合わせて新たな顧客体験を生むことが利益になるとした。

 討論では最初に、モデレーターの桔梗原氏が日本企業のIoTへの関心の高さを引き合いに出し、IoTに関して産業界で何が起こっているのかを聞いた。

 アクセンチュアの清水氏は、IoTに関連して二つの大きな競争が起こっていると説明した。一つは、90年代に始まったモノ作り競争であり、いかに高品質なものを利益を上げつつ届けるか、という視点に立つ。生産拠点を海外に持っていったり、自分たちの会社にしかできない技術を発明したりして戦う。

高品質なモノ作りから、既存のモノを組み合わせた顧客体験へ

 清水氏が挙げたもう一つの競争が、デジタルディストラクション(デジタルによる創造的破壊)である。全産業は、資材、部品、組立などを経て、最終的にはB2C(一般消費者向けの製品/サービス)に行き着く。ここで、最終段階であるB2Cは既に、高機能だから買う時代ではないと指摘する。昔はパソコンのスペックを気にしていたが、今は、どんなことができるのかという顧客体験によって製品を選ぶ時代になっている。

 清水氏の分析を受けてアイティメディアの浅井氏は、モノ作りもデジタルディストラクションも、どちらにせよ日本企業には逃げ道がないのではないか、と述べた。例えばモノ作りでは新興国が追い上げてくる。こうした中で、企業はどんな危機感を持っているのかと問題提起した。

 清水氏は、グローバル企業と日本企業の意識の違いを示す、CEOへの調査結果を提示。グローバル企業の7割がデジタル技術によってビジネスモデルが大きく変わると答えたのに対して、日本企業は2割しかこう答えていない。また、グローバル企業の6割がデジタル技術が新しい収益源になると答えているのに対して、日本企業にとってのデジタル技術は現在の事業を効率化するものでしかないという認識であるという。