「クラウドをなぜ使うか、なぜ使わないのか」――。2015年10月2日、「ITpro EXPO 2015」の基調講演に登壇したのは、クラウド活用の推進派と慎重派の企業3社。丸紅、協和発酵キリン、富士フイルムICTソリューションズである(写真1)。クラウド活用で実感しているメリットや課題、クラウド移行を見送っているシステムの事情などを明かした。

写真1●パネルディスカッションの様子
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写真1●パネルディスカッションの様子
写真2●丸紅 情報企画部 部長付 加藤淳一氏
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写真2●丸紅 情報企画部 部長付 加藤淳一氏
写真3●協和発酵キリン 情報システム部長 篠田敏幸氏
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写真3●協和発酵キリン 情報システム部長 篠田敏幸氏

 クラウド活用の推進派として登場したのが、丸紅 情報企画部 部長付 加藤淳一氏(写真2)。同社は、全世界でパブリッククラウドの積極採用を進めている。メールなどコミュニケーション系のシステムはマイクロソフトの「Office 365」を全面活用。基幹/情報系のIaaS(インフラストラクチャ・アズ・ア・サービス)基盤としては「原則、全てのシステムのAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)利用を想定している」(加藤氏)。今後、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)の利用も増やす。

 クラウド活用の中で実感しているメリットは大きく三つ。システムの置き換えやサーバー調達の負担を減らせること、柔軟なリソース調達ができること、クラウドベンダーの巨額投資による規模のメリットを享受できること、である。

 例えば従来はメールサーバーが世界各地にあり、常にどこかでリプレース作業が発生しているような状態だった。これは「システムにとっては必須でも、会社経営にとっては重要ではない。クラウド活用によって、要員を割く必要がなくなった」(加藤氏)。そのぶん、別の業務に時間が割けるようになった。今後は「ユーザー部門の要望を聞いてシステムの要件を固める上流工程の重要性が増していく。こちらにシフトしていくべきと考えている」(加藤氏)。

 規模のメリットとしては、高機能な新サービスを利用できることに加え、セキュリティ面での利点も重視する。「日々新たな脅威が出てくる中で、大規模なクラウドベンダーに対応を任せることでタイムリーに適切な対策ができると思う」(加藤氏)。

 協和発酵キリン 情報システム部長 篠田敏幸氏は、自社を「推進派に近い“中庸派”」と評する(写真3)。既に、サーバーの40%ほどをAWSに移行済み。クラウドを第一の選択肢とする「クラウドファースト」を基本方針とし、さらにその割合を増やしていく。5年ほど先には、全てを移行できるのではないかと見る。