「ITpro EXPO 2015」のメインシアターに登壇した堀越功・日経コミュニケーション記者兼テレコムインサイド編集長(写真1)は、MVNO市場がここ1年で急速に拡大した理由を解説した。
堀越記者は、2014年度のMVNO契約純増数がソフトバンクを超え、携帯電話市場の第4勢力になったという。MVNO市場の盛り上がりは今が3回目で、これまで以上に拡大した理由は、(1)接続料の壁、(2)端末調達の壁、(3)ビジネス立ち上げの壁、(4)販売チャネルの壁が崩れたからだと説明した。
(1)は、MVNO事業者が通信キャリア事業者に支払う通信料が5年で10分の1に下がった点を挙げた。NTTドコモが10Mビット/秒当たりの月額通信料を2008年度の1000万円超から2014年度までに100万円以下に引き下げたという。さらに、KDDIやソフトバンクもNTTドコモの2倍から3倍だった通信料を1.2倍から1.4倍に引き下げた点を挙げた。特に、ソフトバンクの引き下げについては、「総務省担当者のやる気が影響した」と分析。当初ソフトバンクは、大きな値下げを予定していなかったが、総務省担当者に促されて引き下げたと説明した。
(2)は、最大の壁と表現した。MVNOに参入しようとする事業者に、キャリアのように何万台も端末を仕入れて販売する資金力を持つところは少ない。しかし、SIMフリーの台湾や中国の端末が登場し、さらに富士通やシャープなどのキャリア向け端末を供給していたメーカーもMVNO向けに端末を製造するようになった。キャリア向け端末メーカーが製造し始めた理由として、キャリアの力が弱くなったからではないかと説明した。「MVNO事業者からは、当初キャリアの圧力があって供給してもらえなかったと聞いた」と暴露した。
さらに、ゲオホールディングスやブックオフコーポレーションといった中古端末を取り扱う企業がMVNOに参入したことで、中古端末の流通を活性化させたという。
(3)は、MVNOの参入を支援するMVNEビジネスが本格化したことを挙げた。さらに、IIJやNTTコミュニケーションズなどが具体的にどのMVNOを支援したかという資料も公開した。
(4)は、これまでオンラインストアや家電量販店が中心だったMVNOの販売チャネルが、レンタルビデオショップやケーブルテレビ会社などに広がった点を挙げた。従来の販売チャネルでは、30代から40代の高リテラシー層の男性が中心に契約していたが、レンタルビデオショップでは20代やファミリー層が、ケーブルテレビでは地方在住や高齢層が契約しているという。
今後の動きでは、総務省が現在の997万契約から2016年中に1500万契約を狙っているが、現状のペースでは実現が難しいとした。さらに、MVNO事業者同士による過激な低価格競争や、フランスを例にキャリアによる低価格サービスの開始などがあると、さらなる逆風になるだろうと推測。ただ、MVNOはまだ認知度が低い点、通信品質やサポートが不安な点、魅力的な端末が少ない点などが解消されれば、さらに普及していくとした。