米アップルが2015年9月25日に発売したスマートフォン(スマホ)新機種「iPhone 6s」「同 Plus」の、主要家電量販店における発売直後の販売実績は、2014年9月発売の「iPhone 6」「同 Plus」に比べ16%減にとどまった。従来製品との差異が比較的小さかったほか、本体価格が上昇し多くの店で「実質0円」が姿を消すなど値ごろ感が薄れたこと、予約販売を重視した結果発売日の行列が減り話題性が薄れたこと、などが影響したとみられる。

 市場調査会社BCN(東京都千代田区)が、主要家電量販店における発売から3日間の実売データを集計し、従来製品の発売後3日間のデータと比較した。アップルの直営店や「ドコモショップ」など通信各社の専売店の販売実績は含まれていない。

 販売台数を通信会社別にみると、KDDI(au)の躍進ぶりが目立つ。同社は前回の32.2%から37.5%へと5ポイント以上シェアを伸ばした。一方、ソフトバンクは41.3%で首位を守ったものの、前年の42.9%よりシェアを減らした。NTTドコモも前年の24.9%から21.1%へと後退した。

 auは「通話1回あたり5分以内」など条件を付けつつ、音声定額サービスの月額料金を2700円から1700円に引き下げると発表。競合他社も追随したものの、auが提示した「新料金は月間3GBのプランから適用」に対し他の2社は「月間5GBのプランから適用」と差が付いており、これが明暗を分けたとみられる。

 機種別に構成比をみると、4.7型液晶ディスプレイを搭載したiPhone 6sが88.9%、5.5型のiPhone 6s Plusが11.1%。前年はiPhone 6が82.2%、iPhone 6 Plusが17.8%だったが、今年は小型モデルの構成比が高まった。

 iPhone 6s Plusは発売初日から多くの店舗で大半のモデルが品切れとなっていた一方、iPhone 6sは発売直後の週末を通じて比較的在庫が潤沢な状況が続いており、こうしたことが影響したとみられる。アップルが前年の販売動向を基に、中国など大型モデルの引き合いが強い地域にiPhone 6s Plusを多く振り向けた可能性もある。BCNの道越一郎チーフエグゼクティブアナリストは「ここ数年続いていたスマホの大型化が一段落した可能性もある」と指摘する。

 国内のスマホ市場全体では、既に普及のピークは過ぎたとみられ近年は頭打ちが続いている。そんななかでもiPhoneは特別視され、例年大手通信3社が「実質0円」「一括0円」などの施策を打ち出すなど販促に努め、昨年の発売直後は過去最高のペースを記録していた。

 アップルは28日「iPhone 6s/同 Plusの発売から3日間における全世界の販売台数が1300万台以上となり過去最高を記録した」と発表している。一方で、昨年は当初の発売地域に含まれなかった中国を、今回は当初の発売地域に含めており、これが全体の販売台数を押し上げた可能性がある。

 今回の新製品ではピンク系の新色が加わったほか、画面へのタッチの強さにより操作が変わる新機能を搭載するなどした。しかし発売直後の状況に限れば、値上がりなどのマイナス要因を補えるほどの訴求力を発揮できていないようだ。