写真1●ジェネックスパートナーズ 代表取締役会長の眞木和俊氏
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写真2●「インダストリー4.0」はホットな話題だけに、セミナーには多くの来場者が集まった
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 「インダストリー4.0の時代に、日本のモノづくりはどう向き合うべきか。AIやロボットに真似できない“匠の技”を極めていくことには十分な価値がある」。

 実践型コンサルティングを手がけるジェネックスパートナーズ 代表取締役会長の眞木和俊氏は、2015年9月30日から10月2日まで東京ビッグサイトで開催している「ITpro EXPO 2015」のセミナー「インダストリー4.0は日本の製造業をどう変えるのか」の中でこう語った(写真1、2)。

 眞木氏はセミナーの冒頭、「インダストリー4.0は日本語で言えば『第4次産業革命』だ。ドイツの製造業強化のための国策だったが、今では世界中の製造業に影響を及ぼしている」と切り出した。続けて眞木氏は、「これまでは人間の代わりに高性能な機械でモノを作るという、人間の代替としての機械化があった。これからはそれが進化し、機械同士が連携した『Cyber Phisical System』が構築され、機械が自律的に判断をしてモノを作る時代になる」と指摘。その進行を促進するのがインダストリー4.0と述べた。さらに、それを理解するのに重要なキーワードとして「IoT」「AI」「インダストリアル・インターネット」の3つを挙げた。

 インダストリー4.0は、もともとドイツで製造業の高度化を目指した国策として開始された取り組みだ。「その中心となったのがシーメンス、 ボッシュ、SAPで、大きな目的として『新しいモノづくりのスタイルを丸ごと世界に輸出する』という考え方があった」(眞木氏)という。世界のどこかの国に製造拠点を新たに作るといった考え方ではなく、製造業としてのシステムやノウハウもまとめて輸出するところがこれまでの考え方と大きく違うと眞木氏は説明した。

 インダストリー4.0の進行によってもたらされる懸念の一つに、人間の仕事がロボットに置き換えられてしまうことが指摘されている。それについて、眞木氏は「ドイツでは国を挙げて、働く人たちにもメリットのある置き換え方を模索し、その研究を進めている」と語った。眞木氏によると、ドイツでは、インダストリー4.0によって、化学、機械、自動車、農業など全産業分野で、経済価値成長率を1.7%引き上げることを目指しているという。

 一方、米国では、米ゼネラル・エレクトリック(GE)が中心になって、インダストリアル・インターネットという考え方を打ち出し、それを推進するコンソーシアムを結成している。米シスコシステムズ、米IBM、米AT&Tなどが参画し、産業エネルギー利用効率を1%改善することを目的とした取り組みが進められているという。このコンソーシアムには日本企業も参加しているが、この動きがアメリカで進行しているインダストリー4.0に相当するという。眞木氏は、「現在、ドイツ、アメリカの双方で、このように製造業の新しい世界標準が出来つつある。しかも、既に水面下では『仲間作り』が進んでいる。気になるのは日本の存在感がないこと。日本も早い段階で参加の意志表示をするべきだ」と指摘した。

 眞木氏はセミナーの最後で、「インダストリー4.0で製造業の何が変わるのか」について語った。「お客様が作り手になる」「製品の設計方法が変わる」「工場が完全自動生産に変わる」「原材料や部品調達など物流が変わる」「保守・修理などサポートが変わる」という5点を挙げた。それを踏まえ、「米国では今後30年間で巨大資本のテクノロジーによって雇用の75%が奪われるという報告もある。大切なのはインダストリー4.0の時代になっても機械に振り回されず、人間がさらに創造性を持つこと。使う主体は人間である。AIにもロボットにも真似のできない『匠の技』の追及は、これまで以上に大きな意味を持ってくる」と語り、セミナーを終えた。