クラウドやモバイルの台頭で、既存のビジネスのあり方は激変している。新たなビジネスモデルに迅速に対応するには、新しいITのアプローチが求められる。今後、勝ち残っていくのは規模の大きい企業ではなく、ビジネスを取り巻く環境の変化に俊敏に対応できる企業だ――。
こう語るのは、ヴイエムウェアでハイブリッドクラウドサービス本部 本部長を務める巨勢泰宏氏である(写真1)。同氏は9月30日、東京ビッグサイトで開催中の展示会「ITpro EXPO 2015」で、「2020年、クラウドはこうなる ~明日のために今日できるクラウド~」と題して講演。クラウド環境への移行の重要性を強調するとともに、2014年11月に日本でリリースした同社のパブリッククラウドサービス「VMware vCloud Air(以下、vCloud Air)」の特徴を紹介した(写真2)。
冒頭、巨勢氏は、近年のIT進化について、具体的な数字を交えながら紹介。「1995年にインターネットに接続していた人は1600万人だった。しかし、2019年の第3四半期には、31億人がインターネットに接続すると言われている。さらに、ユーザー1人当たりが所有するデバイス数は、1995年には0.1台だったが、2020年には5.9台になると予想されている。こうした環境で求められるのは、モバイルデバイスユーザーがクラウド上にある無限のリソースにアクセスできる『モバイルクラウド環境』だ」と述べた。
「One Cloud、Any Application、Any Device」を実現
ヴイエムウェアでは、「One Cloud、Any Application、Any Device(1つのクラウドで、あらゆるアプリケーションを、あらゆるデバイスから利用できる)」コンセプトに掲げ、「ハイブリッドクラウド」の重要性を訴えている。ハイブリッドクラウドとは、オンプレミス環境とパブリッククラウドを透過的に利用できるクラウド環境だ。ハイブリッドクラウドは、利用に状況に応じて使い分けができる、運用保守費用の削減が期待できる反面、クラウド間の互換性が確立されていない、既存アプリがパブリッククラウドに対応していない、ネットワークの変更に伴う作業が複雑であるといった課題が指摘されている。
巨勢氏は、「(オンプレとパブリックに)互換性がないハイブリッドクラウドは、アプリの再設計が必要となるなど、管理者の負担も増大してしまう。ハイブリッドクラウドは場所やデータセンターに依存しない基盤の確立が重要だ。vCloud Airであれば、こうした課題を抱えることはない」と訴えた。
技術プレビュー「Cross-Cloud vMotion」の披露も
vCloud Airはオンプレミスとパブリッククラウドで同じ技術を採用しているため、ワークロードをクラウドへ容易に拡張することが可能。オンプレミスにある既存の仮想マシンをパブリッククラウドに移行したり、新しいアプリケーション仮想マシンをクラウド上に直接作成したりできる(写真3)。オンプレミスとパブリッククラウドは単一ツール「vCloud Air Hybrid Cloud Manager」で管理できるため、アプリケーション連携も容易になる。
Cloud Airのデモでは、オンプレミスのネットワークセグメントをクラウドに延伸する操作が披露された。「vCloud Air Hybrid Cloud Manager」を利用すれば、わずか数クリックでオンプレミスのデータセンターからvCloud Airへ仮想マシンを移行することが可能だ。
さらに巨勢氏は、現在、技術プレビューとなっている「Cross-Cloud vMotion」を紹介した。これは稼働中の仮想マシンを、異なるクラウド(サーバ)に瞬間移動する新技術であり、2015年8月に発表されたもの。巨勢氏は「ヴイエムウェアが目指すのは、クラウド上で仮想マシンを止めることなく移動できる環境だ」と語り、今後もvCloud Airの機能強化を進めていくことを強調した。