写真●「ITpro EXPO 2015」の基調講演に登壇した米IBMのロブ・ハイ氏(撮影:中村 宏)
写真●「ITpro EXPO 2015」の基調講演に登壇した米IBMのロブ・ハイ氏(撮影:中村 宏)
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 米IBMでIBM Watson Group Fellow, VP, CTOを務めるロブ・ハイ(Rob High)氏は2015年9月30日、東京ビッグサイトで開催中(10月2日まで)の「ITpro EXPO 2015」の基調講演に登壇した(写真)。「Watsonが切り開くビジネス革新の未来」と題して、IBMが「コグニティブ(認知)・コンピューティング・システム」の中核に据えるWatsonの可能性を語った。

 冒頭でハイ氏はWatson開発の意義を説明した。「現在我々の周りにはスマートフォンやカメラ、家電など様々な電子機器があふれており、心臓部のプロセッサーはどんどん小型化している。これらは何十年も前にフォン・ノイマンやアラン・チューリングといった先人たちが確立した数学的処理を高速にさばくようになった。だが、IoT(Internet of Things)時代にはセンサー情報が無限に蓄積され、数学的な処理が追いつかない。音声や動画情報といった非定型データも数学的処理が難しい。この課題を解決するのが、Watsonであり、コグニティブ・コンピューティングだ」(ハイ氏)。

WatsonはAIではない

 こうした膨大な情報はいくらコンピュータで処理をしても「見えない」か「見えても人間には分かりにくい」ものにならざるを得ない。「こうした『見えないもの』から新しい発見をもたらすのがWatsonの目標だ」とハイ氏は述べた。「見えないもの」をWatsonで明確化するための要素として「学習」「ユーザーインタフェース」「専門性」「推論」の4つを挙げた。

 WatsonはAI(人工知能)の一種として語られることもあるが、ハイ氏は「我々はAIを作りたいわけではない」と強調した。「コンピュータで人間を代替させたいとは思わない。コンピュータで人間の力を補完し、認知を増幅させて、より良い意思決定ができるようにしたい」(ハイ氏)というのが、Watsonが目指す姿だ。

 Watsonの応用として有名なのが、米国の人気クイズ番組「ジョパディ!」でクイズ王に勝利した事例だ(関連記事:「Watsonは始まったばかり」、フェローが語るその未来)。