写真●日本オラクル、クラウド・テクノロジー事業統括PaaS事業推進室室長の竹爪慎治氏(撮影:新関雅士)
写真●日本オラクル、クラウド・テクノロジー事業統括PaaS事業推進室室長の竹爪慎治氏(撮影:新関雅士)
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 「オラクルのPaaSなら既存システムを改修することなくクラウドに移行できる。クラウドなら運用費用を削減できる」---。日本オラクルでクラウド・テクノロジー事業統括PaaS事業推進室室長を務める竹爪慎治氏は2015年9月30日、ITpro EXPO 2015で講演し、同社のPaaSサービス「Oracle Cloud Platform」の特徴を事例やデモを交えて紹介した(写真)。

 冒頭で竹爪氏は、クラウドサービスが求められている背景を説明。例えば、IT予算は年間4%増えることが求められているが、実際には1%しか増えないという。こうした課題を解決する手段としてクラウドへの期待が高まっている。

 クラウドへの期待の高まりは、同社の受注金額にも表れる。オラクルがクラウドサービスに取り組んだ時期は、業務アプリケーションを提供するSaaSが3年前、データベースサーバーなどのミドルウエアを提供するPaaSが1年前。2015年度(2015年5月期)のクラウド事業の新規受注金額は、グローバルで昨年度の3倍、日本では昨年度の5倍以上になったという。

 同社は、IaaS/SaaS/PaaSのすべてを提供している。IaaSでは、汎用サーバーだけでなくエンジニアードシステムをサーバー基盤に使うことで、基幹システムに耐えうるサービスを提供できるという。SaaSは、ERPや人事給与などの基幹系に近いものからSFA(営業支援)などのイノベーションに近いものまでカバーしていることが強みという。

 PaaSは、データベースサーバーの「Oracle Database」やJava基盤の「WebLogic」などの主力ミドルウエアを中心に、BI(ビジネスインテリジェンス)や文書管理、複数システム同士をつなぐインテグレーションサービスなども包括的に提供する。

オンプレミスとPaaSで同一のミドルウエアが動作

 講演の中盤で竹爪氏は、Oracle Cloudの特徴をまとめた。最大の特徴は、データベースサーバーやJavaアプリケーションなど、オンプレミスで動いている既存システムを、すべてそのままクラウド(PaaS)に持っていけることである。「まったく同じミドルウエアを使っているので、オンプレミスのアプリケーションを改変する必要がない。開発スキルもそのまま適用できる」(竹爪氏)。

 反対に、クラウド環境からオンプレミスへとアプリケーションを移行することも簡単にできる。こうしたニーズも高く、まずはクラウドでスモールスタートし、ビジネスの成長に合わせてオンプレミスに移行するという使い方ができる。特に、ビッグデータ系のシステムでこういう使い方が人気という。

 クラウドを使うとミドルウエアの運用をアウトソースできるので、運用コスト面でも優位になるという。例として竹爪氏は、オンプレミス環境で90ステップを要する作業が、PaaSなら5ステップ(Webブラウザ画面上)で完了する様子を具体的なコードを見せて説明した。

 PaaSを使わなくても、他社などのIaaS基盤上にミドルウエアのライセンスを持ち込む使い方もできる。ただし、この場合は、足りない機能を開発したり規模を拡張したりする際に手間がかかるという。オラクルのPaaSなら、こうした手間が要らない。

運用負荷の軽減事例やIoTデモを紹介

 講演ではOracle Cloudの活用事例も紹介した。事例の一つは、データベースサーバーをPaaSに移行したもので、クラウドに移行したことによってパッチ適用作業などの運用負荷を減らした。もう一つの事例は、データベースサーバーのアップデートにかかる期間を、オンプレミス時代の4カ月からクラウドを利用することで3週間へと短縮した。

 文書管理サービスの事例も紹介した。ヘルスケア業界や政府などが利用しているという。主な導入の目的は、それまで分散管理していた文書を一元管理することと、安全に格納すること。オラクルのデータベースやミドルウエアをベースに構築しているので、信頼性とセキュリティに強みがあるという。

 PaaSの興味深い使い方の例として、製造業におけるIoTデバイスのセンサーデータを活用するアプリケーションのデモも見せた。この例では、発電機の装置にセンサーを付けておき、このデータを集めてデータベースに格納し、フィールドメンテナンスのサービスリクエスト(作業指示)を自動で発行する。フィールド担当者はiPad上のモバイルアプリケーションで状況を把握でき、データを後からBIで分析できる。これらの工程をすべてクラウド上で実施する。