図1●受信可能な範囲にある複数のビーコンの電波強度を計測して高精度に測位する(出典:大日本印刷)
図1●受信可能な範囲にある複数のビーコンの電波強度を計測して高精度に測位する(出典:大日本印刷)
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 大日本印刷(DNP)子会社のDNPデジタルコムは2015年9月25日、Beacon(ビーコン、発信機)を利用して屋内位置を高精度に測定する、スマートフォンアプリ組み込み用SDK(ソフトウエア開発キット)を発売した。iOSおよびAndroidで利用できる。岩手県立大学と共同で開発したもの。価格(税別)は、同機能を組み込むアプリケーション当たり年額50万円。販売目標は、同SDKと関連サービスで2016年度(2017年3月期)に年間3億円。今後DNPが開発するビーコン利用アプリに本SDKを標準で実装する。

 最大の特徴は、受信可能な複数のビーコンの電波強度を利用することによって、位置情報を高精度に測位する点である(図1)。背景には、建物の構造や人物の動きによって電波強度がゆらぐため、1個のビーコンだけでは正しく測位することが難しいという状況がある。特に、大きな吹き抜け空間では測位が難しいという。これに対して今回開発した方法では、複数のビーコンの電波強度の変化を計測することで、より正しい位置が分かる。

図2●複数のビーコンから得られる電波強度の推移を調べることによって、向かっている方向が分かる(出典:大日本印刷)
図2●複数のビーコンから得られる電波強度の推移を調べることによって、向かっている方向が分かる(出典:大日本印刷)
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 ビーコン設置時の作業負荷も削減できる。複数のビーコンから同時に電波を受信する仕組みであるため、電波状況を調べながらビーコンの設置場所を注意深く決める必要がないからである。また、複数のビーコンの電波強度の変化を計測することによって、スマートフォンの電子コンパスなどを使うことなく、アプリケーションの利用者が歩いている方向を自動的に判定できる、という特徴もある(図2)。

 DNPによれば、GPSが使えない屋内で位置情報を調べる手段として、ビーコンの需要が高まっている。DNPはこれまで、空港や商業施設での情報配信サービス、駅構内でのナビゲーションサービスなどで、1個のビーコンを利用して位置を測位する実証実験を行ってきた。ところが、ビーコンが1個では、安定したナビゲーションが難しいという問題があった。これを踏まえて新SDKを開発した。新SDKは既に、駅などの公共交通施設向けナビゲーションアプリでの採用が決まっているという。