図●物流倉庫の作業効率を検証した結果(出典:日立製作所)
図●物流倉庫の作業効率を検証した結果(出典:日立製作所)
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 日立製作所は2015年9月4日、業務システムに日々蓄積されるビッグデータから、需要変動や業務現場の改善活動を自動的に理解して、適切な業務指示を行う人工知能を開発したと発表した。物流業務での検証では、作業効率を8%向上させることを実証したという。今後は物流に加え、金融、交通、製造業、ヘルスケア、公共、流通分野などに人工知能を活用するとしている。

 日立が開発した人工知能は、次々に追加される新しい業務データを人の手を介さずに自動的に理解して取り込み、新たな知見やルールに反映する。こうして、業務効率が高くなる仕事のやり方を導き出し、作業者に指示を出す。指示の結果として業務効率が上がった場合も、最新の業務データを人工知能に入力し、新たな知見やルールの生成に利用する。

 人工知能の効果を確認するために物流倉庫管理システムに組み込んだところ、集品作業(棚から物品をピックアップして、検品用の特定の箱に入れる作業)にかかる時間を8%短縮できたという()。同システムでは、翌日の作業順番(物品をピックアップする順番)を1日1回指示した。これにより、特定の棚に作業者が集中して混雑してしまう問題を回避した。

 人工知能を業務システムに組み込んだ背景には、日々の需要変動や、それに対応した現場状況の変化などを考慮して、さらなる業務の効率化を図る必要が生じているという状況がある。人工知能を活用することによって、こうした環境変化に自動的に追従できるようにする。

 従来の業務システムは、あらかじめ設計されたプログラムに従って動作しているため、システムを設計し直さない限り、現場の作業者の工夫や改善活動を業務システムに反映できなかった。また、需要変動やそれに対応した現場状況の変化に応じて、通常とは異なる業務を行わなければならなくなった場合も、業務システムに業務手順や設定の変更を行う必要があった。