パナソニックは2015年8月28日、タブレット型PCを使って数10cm程度の測位精度を実現するシステムを開発したと発表した。豪雪地帯での除排雪作業支援やスマート農業支援といった用途への導入を目指している。2015年12月より北海道岩見沢市で、このシステムを用いた除排雪作業支援システムの実証実験も実施する。

独自アルゴリズムで測位時間を大幅短縮

 今回パナソニックが開発したシステムは、耐衝撃・耐振動・防塵・防滴機能を備えるタブレット型PC「TOUGHPAD」に、衛星電波受信モジュールと携帯回線を用いたワイヤレスWAN接続、独自の衛星測位技術を組み合わせたものになる。市街地の幹線道路環境で約50cm、周辺に高い建物がない水田や農地環境で約10cmの測位精度を実現しているという。

 今回発表したシステムで利用するタブレットは「FZ-M1」(7型液晶、モバイル/車載用途向け)と「FZ-G1」(10.1型液晶、車載用途向け)の2機種。いずれもCPUとして米インテルのCore i5を採用し、屋外での視認性が高い高輝度液晶を搭載している(写真1)。

写真1●耐衝撃・耐振動・防塵・防滴機能を備えたタブレット型PC「TOUGHPAD FZ-M1」
写真1●耐衝撃・耐振動・防塵・防滴機能を備えたタブレット型PC「TOUGHPAD FZ-M1」
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 システムに採用している衛星測位技術は、「1周波RTK-GNSS」機能を拡張したもの。GPSなどの航法衛星から送信される複数の電波のうち、一般の測位には二つの周波数の電波を用いている。「1周波RTK」は、この二つの周波数電波の一つのみを用いる方式だ。膨大な演算を必要とするため、これまで組み込み系OSを搭載した端末上では測位終了までに平均10分程度かかり、実用的ではなかったという。

 今回のシステムでは、タブレット型PCが搭載する強力なCPUパワーを使うことで複数の測位エンジンを動作させ、時間をずらしながら測位した結果から最も確からしいものを導き出す独自アルゴリズムを開発した。この結果、測位にかかる時間を平均90秒まで短縮した。

 さらにパナソニックが配信する補正データを使うことで、測位精度を高めている。補正データは全国に約1200カ所ある国土地理院の電子基準点のうち、作業場所に近い3カ所程度からのデータを基に作成する。