写真1●提携を発表するKDDIの高橋誠専務(左)とテレビ朝日の角南源五常務
写真1●提携を発表するKDDIの高橋誠専務(左)とテレビ朝日の角南源五常務
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写真2●auが取得したビッグデータを、テレビ朝日の制作部門に提供する
写真2●auが取得したビッグデータを、テレビ朝日の制作部門に提供する
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写真3●ビッグデータを参考にすることで、よりネットの特性に合った動画の制作が可能になるとする
写真3●ビッグデータを参考にすることで、よりネットの特性に合った動画の制作が可能になるとする
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 テレビ朝日とKDDI(au)は2015年8月20日、auのスマートフォン(スマホ)向け動画配信サービス「ビデオパス」向けの動画配信で提携すると発表した(写真1)。国内で初めて、視聴状況のビッグデータを解析して制作部門に提供するのが特徴。視聴者の属性データと検索・視聴行動データなどを制作部門が参考にしてネットの特性に合った動画制作をしやすい環境を整え、乱立する動画配信サービスの中で存在感を出したい考えだ。

 ビッグデータ活用の第1弾は、10月に開始予定のAKB48グループ主演の連続ドラマを予定する。地上波で放送する本編と別に、ネット向けのスピンオフ作品を制作してビデオパスで独占配信。この解析データを、auからテレ朝の制作部門に提供する。

 提供するデータは、(1)会員の属性や他サービスの利用状況といった「顧客データ」(2)ビデオパスでの検索履歴や視聴時間、途中離脱の状況といった「行動データ」(3)作品の基本データと作品性、感情といった「メタデータ」の3種類。会員の個人情報や位置情報は含まず、統計処理した分析データのみを提供する(写真2)。

 例えば、動画の長さと離脱率との関係や、視聴開始後どの程度の時間で離脱率が上がったかなどを分析し、ネット動画に適した長さの動画を増やしたり、離脱率が上がる時間帯に山場を作ったりといった活用を見込んでいる。「あくまで参考にするというものだが、解析データによって(番組制作に)新たな化学反応が生まれるのではと期待している」(KDDIの高橋誠専務)とする(写真3)。

 併せてテレ朝は、ビデオパス向けに(1)放送中の連続ドラマのうち放送済みの全話の配信(2)地上波バラエティー番組のコーナーに連動したネット独自動画の配信――を順次展開。それぞれ第1弾として、(1)は7月期連続ドラマ「民王」で8月22日から、(2)は「お願い!ランキング」の一部コーナーで8月25日から、それぞれ実施する。ただし(1)は永続的な配信ではなく、民王の場合は10月18日までの予定。

 ビデオパスはau契約者向けに月額562円(税抜き)で提供しており、会員数は「100万人を少し超えたところ」(高橋専務)。売り上げの一部を視聴実績に応じてコンテンツホルダーに配分する事業モデルとみられる。テレ朝がこれまでビデオパスに配信済みの動画は約20タイトルと少なく、今回の提携を機に取り組みを強化する考え。「乱立する動画配信のプラットフォームで当社が一定のポジションを獲得するとともに、200万人、300万人と会員を増やして成長の果実を得る」(テレビ朝日の角南源五常務)ことを狙う。