写真●「IT Japan 2015」で講演する東京医科歯科大学教授の室伏広治氏(写真:井上裕康)
写真●「IT Japan 2015」で講演する東京医科歯科大学教授の室伏広治氏(写真:井上裕康)
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 2015年7月9日、東京・千代田のホテルニューオータニで開催中の「IT Japan 2015」(日経BP社主催、10日まで)の最終講演で、“鉄人”室伏広治氏が登壇した(写真)。陸上競技ハンマー投げで2004年アテネオリンピックで金メダル、2012年ロンドンオリンピックで銅メダルに輝いた実績を持つ室伏氏は現在、東京医科歯科大学教授スポーツサイエンスセンター長を務めつつ、TOKYO2020スポーツディレクターとして2020年の東京オリンピックの成功に向けて様々な活動を展開している。

 室伏氏は講演の冒頭で、「昨年達成した記録」について触れた。世界一を極めた室伏氏にとって自負するもう一つの記録、それは昨年達成した日本選手権で20連覇の偉業だ。「20年間勝つためには、20年間出場しなければならない。継続することは世界一を極めることと同じくらい大変なことだ」と室伏氏は語った。「皆さんにとっては(ハンマーは)ただの鉄の玉かもしれない。ただ、自分自身がそこに価値を見い出して磨いていけば、それはただの鉄の玉ではなくなる」。室伏氏は自身の経験を交えながら、記録の壁、年齢の壁をどう超えてきたかを講演で語った。

0.04秒のためにかける4年間

 室伏氏はハンマー投げの歴史から説明を始めた。歴史をひもとくと、紀元前1800年、アイルランドで開かれたスポーツの祭典「テイルティーンゲーム」で初めてハンマー投げの競技が開催されたという。近代オリンピックでのフィールド種目の投げる競技は「砲丸投げ」「円盤投げ」「やり投げ」「ハンマー投げ」の四つ。その中でもハンマー投げは最も重い7.26kgを投げる。これは最も重いボーリング球の16号と同じ重さだという。ハンマー投げは鉄の玉、ワイヤー、そしてハンドルの三つのパーツに分かれているが、最大時ワイヤーにかかる張力は300kgにも及ぶという。「投げる競技の中では最も負担が大きい競技」(室伏氏)という。