写真●日本IBM 執行役員ストラテジー&アナリティクス担当の池田和明氏
写真●日本IBM 執行役員ストラテジー&アナリティクス担当の池田和明氏
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 「いかに価値あるユーザー体験(UX)を提供するか。これは今も昔も、企業にとって最も大事な戦いだ」――。日本IBM執行役員ストラテジー&アナリティクス担当の池田和明氏は2015年7月9日、東京・千代田のホテルニューオータニで開催中の「IT Japan 2015」(日経BP社主催、10日まで)で、このように込めた(写真)。

 「新たな世界にどう適応するか 事業戦略とテクノロジー」と題して講演した池田氏は、「後世の人々は今の時代を、『データ爆発の時代だった』と振り返るだろう」と語る。同氏によると、2020年には44ゼタバイトという膨大なデータが世界にあふれるようになるという。

 特に近年、著しく増加しているのが、センサーデータとソーシャルデータだ。「我々が生きる物理空間の情報がデータに変換され、デジタル空間で分析された結果が、また物理空間にフィードバックされる。こうした時代が到来している」(池田氏)。

 物理空間とデジタル空間が混在する中、池田氏は4つの領域で企業競争が繰り広げられるとする。「高価値なUXの提供」、「データ資源の活用」、「二つの空間の接点となるハードウエアの導入」、「ユーザーとサービサーが集まるプラットフォームの運営」である。これらの中でも全ての企業が重視すべきなのが高価値なUXの提供、というわけだ。

 以前から重要だったUXだが、昨今はそれを支える要素に変化の兆しがある。池田氏は、「顧客は単体の商品ではなく、UXの良し悪しで購買行動を起こす。昨今はUXを高めるものとして、“IT”の価値が高まっている」と話す。

 同氏はそれを象徴する現象として、4つの破壊的イノベーターを挙げた。米ウーバー、米フェイスブック、中国アリババグループ、米Airbnbである。

 例えば、「米ウーバーは車両を1台も保持せずに世界最大のタクシー会社になった。世界で最も普及しているメディアは、自らのコンテンツを持たない米フェイスブック」(池田氏)であり、「ITを使っていかにユーザーの利便性を高めるかに集中している」と、池田氏は強調する。これらの企業では、ユーザーに利用されることでデータが集まり、それを分析・活用することで、より良いサービスにつなげるという好循環が生まれている。