写真●SAPジャパンの福田譲代表取締役社長(写真:井上裕康)
写真●SAPジャパンの福田譲代表取締役社長(写真:井上裕康)
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 「スポーツの世界の競争力を、ビッグデータが変えている。ここから、ビジネスが学べるものは多い」――。2015年7月9日、東京・千代田のホテルニューオータニで開催中の「IT Japan 2015」(日経BP社主催、10日まで)に登壇したSAPジャパンの福田譲代表取締役社長が例に挙げたのは、2014年のサッカーW杯で優勝したドイツチーム(写真)。サッカーにおけるデータ活用の事例を通して、業務プロセス変革の重要性を訴えた。

 ドイツは2006年に自国で開催したW杯で優勝を逃した。それ以降、ビッグデータを活用してチームの力を高めてきたという。従来も、どの選手が何秒ボールを操っていたかなどはスコアラーが記録しており、1試合で2000件程度のデータは取れていた。だが90分間の試合中、誰かがボールを触っている時間は40分程度。つまり「選手一人当たり、たった2分ほどしか可視化されていなかった」(福田氏)。

 そこで、ボールを持っていない時間も含めて、選手の動きをデータ化。データ量は、1試合当たり4000万件ほどに増えた。これらを、欧州SAPのインメモリーデータベース「HANA」などを使って解析した。すると、意外なことが浮かび上がったという。相手チームにボールを取られる原因は、そのときボールを触っていた選手でなく、ボールを持っていない選手にあるということだ。10~15メートルほどの間隔を空けてパスできるコースを作っていれば、ボールを維持し続けられると分かった。

 そして、練習の仕方を大きく変えた。「ボールを持っているときの練習ばかりしていたドイツチームが、今ではボールを持っていないときの練習ばかりしている」(福田氏)。