「リアルとデジタルがタイムラグなしで結びつき始めた。これはインターネットと同じぐらいのインパクトをこれからのビジネスに与える」――。NTTデータの岩本敏男代表取締役社長は2015年7月8日、東京・千代田のホテルニューオータニで開催中の「IT Japan 2015」(日経BP社主催、10日まで)において、パラダイムシフトが起きつつある現状を強調した(写真)。
岩本社長は「デジタル時代の新たな経営~調和的発展を実現するために~」と題した講演に登壇。冒頭、デジタル時代の変化を示す一つの例として様々なセンシング技術を使った製品やサービスを紹介した。
「センシングはたいへん我々の身近になっている」(岩本社長)。例えば仏バボラのラケットにはグリップ部分に加速度センサーやジャイロセンサーが入っていて、自分が打ったボールの種類や強さなどが分かるといい、NTTと東レが共同開発したトレーニングウエアは生体センサーを内蔵し、心拍数が分かるほか健康管理にも生かせるとした。
また、前面に立った人の顔をセンシングして年齢や性別を認識して、それに基づく服を自動的に推薦するデジタルサイネージやグーグルのアシスタントサービス「グーグルナウ」も紹介。「センシングのリアクションにかかる時間が非常に早くなっている」と話した。
こうしたセンシングの結果、自分が意識していなくても情報が与えられるようになった。「リアルの世界とデジタルの世界が融合していてタイムラグがほとんどない。自分がリアルの世界で生きているのかデジタルの世界で生きているのか意識しなくなっていた。この変化がビジネスにインターネットと同じくらいのインパクトを与える」(同)。
デジタル=SMAC×IoT
リアルとの融合が進むデジタル。その注目は世界規模で高まっているという。岩本社長は「2015年、時代はデジタルへ動いている。今年は世界中どこにいってもデジタルとトランスフォーメーション(変革)の二つのキーワードしか聞かない」と話した。去年まではSMAC(ソーシャルサービス、モバイル、ビッグデータアナリティクス、クラウド)一色だったという。
デジタルの定義は「定まっていない」としたが、少なくともアナログの対義語のデジタルではないという。「SMACはほとんどコモディティ化してきている。そこにIoTのスパイスがかかったものがデジタルだ。デジタルでビジネスがどう変化させるかが今日の大きなテーマになっている」と話した。
こうした中、NTTデータはセンサーを使ったIoT事業を着実に進めている。例えば東京ゲートブリッジやベトナム南部のカントー橋に加速度センサーや重量計などの各種センサーを取り付けて維持管理に生かしているという。「たくさんのセンサーからリアルタイムに膨大なビッグデータをセンシングしてデータセンターに送ってそこで解析している」(同)。
このセンサーにCPUやメモリー、ネットワーク接続機能を実装すると、次のビジネス展開が見えてくるという。岩本社長はその実例として米テスラモーターズなどを挙げた。「電気自動車としてスタートしたが、もはや車の付いたアプリ、車の付いたスマホだ」。テスラ車にはこの夏にもオートパイロットという自動運転機能がダウンロードされるという。「運転手がウインカーを出すだけで車が自動的に車間を計測して車線変更できる」。