写真●「IT Japan 2015」で講演する宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙探査イノベーションハブ・ハブ長(宇宙科学研究所宇宙飛翔工学研究系教授)の國中均氏(写真:井上裕康)
写真●「IT Japan 2015」で講演する宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙探査イノベーションハブ・ハブ長(宇宙科学研究所宇宙飛翔工学研究系教授)の國中均氏(写真:井上裕康)
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 「20年以上出遅れて、予算は10分の1という劣勢でも、着想と工夫次第ではライバルに勝てる」。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙探査イノベーションハブ・ハブ長(宇宙科学研究所宇宙飛翔工学研究系教授)の國中均氏は2015年7月8日、東京・千代田のホテルニューオータニで開催中の「IT Japan 2015」(日経BP社主催、10日まで)において、「宇宙探査イノベーション:はやぶさ・はやぶさ2小惑星探査機の事例」と題して講演した(写真)。

 まず國中氏は、2010年に地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」の研究開発の経緯を話した(関連記事:「信念に基づく“独断”こそがプロマネの仕事」はやぶさの川口淳一郎教授)。はやぶさに搭載した「イオンエンジン」について解説しながら、イノベーションの秘訣を説いた。

 國中氏は、1980年代後半ごろからイオンエンジンの研究開発に着手。石油燃料で飛ぶ従来のジェットエンジンに比べて、少ない燃料で大きい出力を得られる。燃料を含む重量をギリギリまで切り詰める必要がある宇宙探査分野に向くエンジンだ。

20年進んだマイクロ波技術に着目

 ただし、宇宙開発分野で最先端を走る米航空宇宙局(NASA)は、既に1960年代からイオンエンジンの研究開発を進めていた。「20年以上遅れて参入するという不利は大きい。だが一方では、20年進んだその時点での最新技術を取り入れられるという面もある」(國中氏)。

 國中氏は、米国式の「直流放電式イオンエンジン」ではなく、全く異なる構造の「マイクロ波放電式イオンエンジン」を作ることを考えた。マイクロ波の電波発信技術が20年前に比べて発展している点に着目し、小型で保守性の良いイオンエンジンが作れると考えた。