写真●実証実験で使用する通信機器。土砂中に埋め込んだセンサーが取得したデータを、遠隔のPCに送信する
写真●実証実験で使用する通信機器。土砂中に埋め込んだセンサーが取得したデータを、遠隔のPCに送信する
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 NECは2015年6月29日、土砂崩れの発生を事前に予測する実証実験を開始したと発表した。島根県鹿足郡津和野町で実施する。斜面に水分計や振動センサーを埋め込み、土砂崩れが発生する危険度をリアルタイムに算出する。土砂崩れが発生する10~40分前に危険を察知し、監視員などに知らせる。

 実験では、2カ所の斜面に、水分計と振動を検知するセンサーをそれぞれ24台埋め込む。センサーは有線ケーブルで通信機器に接続されており、遠隔にある専用PCに測定データを送信する(写真)。

 水分計や振動センサーは、土中の水分量や土砂の振動を検知する。これらのデータを、専用PCに搭載するソフトウエアが解析し、土砂崩れが発生しそうな危険度を数値で算出する。危険度が、事前に設定したしきい値を超えた場合、アラートなどを上げて監視員などに知らせる。「精度は実験を通じて確認したいが、以前の実験では10~40分前に土砂崩れが予測できた」(NEC)。

 振動センサーは、水分計に比べて経年劣化が遅い。振動センサーの寿命は約5年だが、水分計の寿命は約1年。加えて、水分計は電極を使って測定することから、周囲の土質を変化させてしまうため、設置箇所を定期的に変更する必要があったという。NECは、実験を通じて振動センサーの実用化を検討する。

 NECによれば、土砂災害危険箇所に指定される区域は全国で約52万カ所。実証実験を実施する津和野町は、2013年7月に豪雨の影響で浸水や土砂崩れなどが発生し、交通などが寸断された。同災害を受けて、災害対策整備を進めている。