写真●一蘭 代表取締役の吉冨学氏
写真●一蘭 代表取締役の吉冨学氏
撮影:山根 昌三
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 福岡市博多区で開催したICT専門展「Cloud Days 九州 2015/ビッグデータEXPO 九州 2015/セキュリティ2015 in 九州/スマートフォン&タブレット2015 in 九州」(主催:日経BP社)。2015年6月25日午後4時から最後のキーノートスピーチを開いた。登壇したのは、人気の博多ラーメン店チェーン一蘭の代表取締役を務める吉冨学氏。「一寸法師戦略~弱者が強者に勝つ!商売の秘訣~」と題して、その経営哲学や商売の秘訣を熱く語った(写真)。

 一蘭は博多発祥の人気ラーメンチェーン。1993年の創業以来、順調に成長を続け、今では国内外に50店舗強を展開する。同店は唐辛子の赤いたれを初めて博多豚骨ラーメンに用いるなど味の評価も高い一方で、ユニークな店舗レイアウトや注文の仕方などでも知られている。

 その象徴が周囲からラーメンを食べている姿を見えないようにする店舗レイアウト。具体的には、カウンターの席の両横を衝立で仕切り、店員がいるカウンター前もラーメンの提供後はすだれで視線を遮る。同社は、この仕組みを「味集中カウンター」と名づけ、特許も取得している。

 味集中カウンターが生まれたきっかけは、創業して数年たったころ吉冨氏が耳にした「1人でラーメン店に入りにくい」という女性客の言葉だったという。確かに一般にラーメン店は客の大半を男性が占める。だが、それでは大きな潜在市場をみすみす捨てることになる。そこで吉冨氏は自ら作成したアンケートを手に街頭に立ち、収集したアンケート結果を分析して、このレイアウトに行き着いたという。仕組みはアナログだが、発想はデータ経営そのものだ。

 一代にして年商100億円を超える企業群を創り上げた吉冨氏は40分間の講演を「法則」「手段」「能力」「マネジメント」、そして「心」の5つのパートに分けて流れるように進めた。「デジタルよって様々なことが可能になった半面、失われたものも大きい」とし、「心が最強のブランド」と力説した。「大事なのは欲を愛に変えること。欲からもたらされたものはいずれ崩壊するが、愛に変えれば永久に続く。欲よりも愛のほうが絶対に儲かる」。

 一方で講演の中では、「デジタルは非常に大事」とも発言し、社員間のコミュニケーション基盤にサイボウズ製品を使っていることを明らかにした。また講演では、ブランド構築の重要性を繰り返し強調した。「捨てる勇気が大事」と中核事業に集中することやストーリー性を訴えることの重要性などを訴えた。

 「原点に返れ――。良いことも悪いことも人の心がするんだ」。自らの半生で得た様々な成功体験と失敗体験に基づいた吉冨氏の熱い語り口に満員の聴衆は熱心に聞き入っていた。