写真●IDC Japan 中村智明 リサーチバイスプレジデント
写真●IDC Japan 中村智明 リサーチバイスプレジデント
撮影:山根 昌三
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 福岡市博多区で開催中のICT専門展「Cloud Days 九州 2015/ビッグデータEXPO 九州 2015/セキュリティ2015 in 九州/スマートフォン&タブレット2015 in 九州」(主催:日経BP社)。2日目となる2015年6月25日午前10時からのキーノートスピーチには、IDC Japan 中村智明 リサーチバイスプレジデントが登壇した。「ITのイノベーションと産業の大変革を加速する第3のプラットフォーム」と題して、国内ICT市場における第3のプラットフォームによる変革のインパクトと、ICT産業の各プレイヤーが採るべきアクションを提言した(写真)。

 IDCはモビリティ、ビッグデータ、ソーシャル、クラウドの4つを第3のプラットフォームと定義している。「2008年から提唱しており、来年あたりで基盤の創生は終わる」と中村氏は明言した。さらに「今年から2020年ぐらいまでは刈り取りの時期、すなわちイノベーションステージが始まり、第3のプラットフォームの上に産業特化型のITソリューションが生まれる」と予測した。ちなみに「第1のプラットフォーム」はメインフレーム、「第2のプラットフォーム」はクライアントサーバーである。

 「第3のプラットフォームのイノベーションステージを加速させる触媒が新たに3つ加わった」と中村氏は分析する。コグニティブ(認知)システム、ロボティックス、3Dプリンティング・合成生物学――である。事実、「IBMのWatsonに代表されるコグニティブシステムは、国内の大手金融機関が相次いでコールセンターに採用を表明するなど、大きな流れになっている」。

 中村氏はロボティックスや3Dプリンティング・合成生物学の最新事例を引用しながら、イノベーションの最前線を紹介していった。例えば、ナイキは靴の製造に3Dプリンティング技術を導入して縫製過程を減らし、店舗で足型をとってから1時間でオーダーメイドの靴を顧客に渡せるようにしたという。「このような触媒となるようなイノベーションアクセラレーターの技術は今後も増えていく」。

 IDCは2020年には全世界のICT支出の60%を第3のプラットフォームが占めるだろうと予測している。前年の45%から上方修正した。こうした状況を受けて中村氏は「新しいプラットフォームに着目しないとICT産業の成長はない」と力説した。

 次に中村氏はモバイルデバイス用プラットフォームやクラウドで寡占化が急速に進むとの予測を示した上で、「主要プラットフォームの上に100個以上の産業特化型プラットフォームが生まれる」と語った。問題は産業特化型プラットフォームの担い手が、従来のITベンダーではなく、これまではユーザー企業といわれていたプレイヤーに移ること。中村氏は米ゼネラル・モーターズ(GM)がソフトウエア開発者を1400人から8000人に増員している例などを引きながら、従来のICTベンダーに警鐘を鳴らした。「サービスプロバイダーを志向するユーザー企業とエコシステムを組めなかったICTベンダーは大きなダメージを受ける」。

 このほか中村氏は次世代のイノベーションツールやキラーアプリケーションなど変化の最前線を紹介した後、九州地区のICT投資動向を紹介した。「2015年には福岡地区を中心に緩やかな景気回復が見られるが、2016年以降は福岡地区とそれ以外の地域で2極化が進む」とみる。2014~2019年における福岡地区のICT投資の平均成長率は0.4%。これに対して福岡以外の地域の平均はマイナス0.8%という。