Googleの透明性レポート
Googleの透明性レポート
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 米Googleに対し、フランスのプライバシー当局が「忘れられる権利(right to be forgotten)」の適用範囲を世界に広げるよう命じたと、複数の海外メディア(米Wall Street Journal米New York Times英Financial Timesなど)が報じた。

 報道によると、フランスのデータ保護に関する監督機関である情報処理・自由全国委員会(CNIL)は現地時間2015年6月12日、欧州だけでなくすべてのドメインにおいて、忘れられる権利に基づく情報削除を行うようGoogleに求める正式指示を発行した。

 Googleは2014年5月に欧州連合(EU)の欧州司法裁判所(ECJ)から受けた判決に従い、忘れられる権利が適用されると判断した情報を欧州向け検索エンジンの検索結果から削除する作業を進めている。しかし削除措置の範囲が欧州に限られているため、例えば米国向け「Google.com」などではこれまで通りリンクは検索結果に表示される。

 こうした状況を疑問視する声は多く、EU加盟国のプライバシー保護当局を代表するEU作業部会は2014年11月、忘れられる権利を米国も含めてすべてのサイトに適用することを求める指針を策定した(関連記事:EU、米国版Google検索にも「忘れられる権利」の適用を迫る指針策定)。

 一方、Google幹部や社外専門家などで構成されるGoogleの諮問委員会は2015年2月、情報削除の対象をEU圏内にとどめるのは適正だとする見解をまとめた報告書を公開している(関連記事:「忘れられる権利」は欧州のみで適正、Google諮問委員会が報告書)。

 CNILは、15日以内に指示に従うようGoogleに求め、従わない場合は制裁措置の手続きを開始するとしている。CNILは制裁金として最大15万ユーロを科す可能性がある。

 Googleが公開している透明性レポートによると、忘れられる権利に関して5月29日までにGoogleに寄せられた削除依頼のうち、フランスからの依頼は5万5510件で最も多い。依頼対象のリンクは18万6930件で、Googleはこのうち47.8%を削除している。

 CNILは2014年1月、別のプライバシー問題でGoogleに15万ユーロの罰金支払を言い渡している(関連記事:仏データ保護当局、Googleに15万ユーロの制裁金を命令)。