写真●NTTドコモの栄藤稔執行役員
写真●NTTドコモの栄藤稔執行役員
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 「IT化よりももっと深い、“産業のソフトウエア化”が進んでいる。今回のイベントに参加してびっくりしたのは、ベンダー非依存の体制やアジリティ(迅速さ)が想像以上に広がっていることだ」 NTTドコモの栄藤稔執行役員は、2015年6月2日と3日に開催されたクラウド専門イベント「AWS SUMMIT 2015」でこう切り出した(写真)。

 講演で栄藤氏が紹介したのは、ドコモ・クラウドパッケージ(関連記事:なぜドコモがAWSを“担ぐ”のか? 「ドコモ・クラウドパッケージ」の真の狙い)の開発背景だ。栄藤氏が「ドコモ・クラウドパッケージは、ユーザー視点で作ったテンプレート」と言うとおり、ドコモ・クラウドパッケージは経験から生まれたものである。

強固な情報管理体制が偉大な“資産”に

 ドコモ社内では、クラウドサービスの活用を前提とする「クラウド・ネイティブ」な環境が広がっている。ドコモのAWSの利用は、2011年のWebサービス・システムを皮切りに、2014年には業務系に拡大。ミッション・クリティカルの領域への適用も視野に入れている。

 そうした中から出てきたテンプレートが、ドコモ・クラウドパッケージとなる。社内でのクラウドサービスの活用を通じて蓄積していった、「内部統制」「セキュリティポリシーの制定」「システム構築時の注意点」「コスト管理やセキュリティ管理」などに関するノウハウをまとめたものだ。特にセキュリティに関しては、ドコモ社内のチェック項目が230もあり、数多くのハードルを乗り越えてクラウドに移行できた様子だ。

 この過程を経て得られた結果は、他社にとっても貴重なノウハウとなる。当初は、クラウド移行時の負担としか思えなかった社内の情報管理体制だが、結果的に「偉大なアセットになった」(栄藤氏)わけだ。

 ドコモ・クラウドパッケージを社外の組織が利用すれば、知を共有し、効率を上げられるという。クラウド利用をテンプレート化することで、既にドコモ社内で実証された水準と同じレベルのシステムを実現し、企業間バリューチェーンを促進できるというのだ。

 栄藤氏によれば、既に2ケタの企業にライセンスを提供済みという。一例として挙げたのはベンチャー企業のベジタリアで、「一晩にして、ドコモと同じセキュリティレベルを手に入れた」(栄藤氏)。

 今後の強化予定として、6月に有償オプションとしてコストビジュアライザ、夏ころにはデータ分析コンサルティングを追加提供するとした。栄藤氏は講演の最後に、「APIエコノミーを作るのが夢」とし、企業間のシステムを有機的につなげることで、イノベーション創出を加速していきたいと話した。