米国防高等研究計画局(DARPA)が主催する災害救助ロボットの競技会「DARPA Robotics Challenge(DRC)」の決勝戦(Final)が、2015年6月5日(米国時間)に米国カリフォルニア州ポモナ市の「Fairplex」で開幕する。2013年12月に開催された予選会(Trial)では日本の「SHAFT」(その後米グーグルが買収)が優勝したことで知られる競技会には今回、米国や日本、ドイツ、韓国、イタリア、香港などの24チームが参加している。

写真1●「DARPA Robotics Challenge」のプログラムマネージャーを務めるGill Pratt博士
写真1●「DARPA Robotics Challenge」のプログラムマネージャーを務めるGill Pratt博士
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 競技会前日の4日には、DRCのプログラムマネージャーを務めるGill Pratt博士(写真1)が記者会見を行い、競技会の概要などを説明した。DRCは2011年に起こった福島第一原子力発電所のような過酷な災害現場で人間の代わりに活動できるロボットを開発するという目的で開かれているもの。Pratt博士は「優秀なアイデアに賞金を授与する競技会を開催することでイノベーションが促進されることは、歴史が証明している」と力説する。

 例えば、フランスのナポレオン・ボナパルトが1795年に、食品保存法のアイデアを募る競技会を開催したところ、「瓶詰め」や、それを発展させた「缶詰」が1810年までに実用化されたことは広く知られている。DARPA自身も2004年から2007年にかけて、自動走行車に関する競技会「DARPA Grand + Urban Challenge」を開催。そこで優勝した米スタンフォード大学や米カーネギーメロン大学の技術が、現在商用化が進められているグーグルの自動走行車技術などの基盤となった。

 Pratt博士は「競技会はあくまで、今の技術で何ができるかを示すプロトタイプを競うものであり、実用化にまで何年かかるかは不明だ」としながらも、今回のDRCが災害救助ロボットの実用化に果たす意義が大きいと強調した。

 5日から始まる競技会では、ロボットが以下に挙げる8個のタスクを1時間以内に完了できるかどうかで24チームが競う。タスクは、(1)人間用の自動車を走行する、(2)自動車から降りる、(3)建物のドアを開けて中に入る、(4)バルブを閉める、(5)壁を破壊する、(6)突然の状況に対応する、(7)がれきを撤去する、(8)階段を登る、というもの(写真2)。

写真2●ロボットが挑戦する8種類のタスク
写真2●ロボットが挑戦する8種類のタスク
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