米Appleは、まもなく開催する世界開発者会議(WWDC)で新たな音楽ストリーミングサービスを発表するもようだと、複数の海外メディア(米AppleInsider米CNET米The Vergeなど)が現地時間2015年6月1日、米Wall Street Journalの記事を引用して伝えた。

 それによると、Appleは月額10ドルですべての楽曲が聴き放題になるオンデマンド型の音楽配信サービスを計画しているという。ただし、英Spotifyが提供しているような無料の広告付きサービスは用意しない。その代わり、Appleが現在「iTunes Radio」で行っているような無料のインターネットラジオサービスは提供する。この無料インターネットラジオについては、著名なDJなどがホスト役を務める数多くのチャンネルを設けるなどし、サービス拡充を図るという。

 Wall Street Journalは事情に詳しい関係者の話として、Appleは現在大手レコード会社と交渉中だが、Universal Music Group、Sony Music Entertainment、Warner Music Groupの3社とはまだ取引が成立していないとも伝えている。もし、6月8日に開催する世界開発者会議までにライセンス契約を締結できなければ、Appleは発表を延期する可能性があるという(関連記事:Apple、「WWDC」を6月8~12日開催、新音楽サービス発表はあるか?)。

 音楽ストリーミングサービスにはSpotifyやApple傘下のBeats Musicのように、好みの楽曲やアルバムを指定できるオンデマンド型と、Pandora Mediaのように、好みの楽曲を推測して自動的に流すラジオ型がある。だがWall Street Journalによると、Appleはこのいずれもの分野で成功していない。例えばBeats Musicの会員数はわずか30万人程度。iTunes Radioについては「ほとんど影響力を持っていない」という。これに対し、Spotifyの有料会員は1500万人、広告付きサービスの無料会員は4500万人。Pandora Mediaには、7900万人超のアクティブユーザーがいるという。

 Appleは、新たなサービスで2つの機会を狙っているとWall Street Journalは伝えている。1つはiTunesでダウンロード音楽に年間30ドル程度を使う平均的な顧客を、年間120ドルの顧客にすること。もう1つは米国やオーストラリア、ニュージーランド以外のPandoraのサービスを利用できない国の人に、Appleの無料インターネットラジオサービスを利用してもらうこと。

 これらの顧客が、やがてAppleの有料会員になることを同社は期待しているという。同社は新サービスの開始に伴い、大々的なプロモーションを行うほか、サービスをAndroid端末でも利用できるようにする計画だ、とWall Street Journalは伝えている。