写真1●広島県福山市にある常石工場。年間10隻程度の船を建造している
写真1●広島県福山市にある常石工場。年間10隻程度の船を建造している
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 造船事業を手掛けるツネイシホールディングスは、船の組み立て工程などでドローン(無人飛行機)を使って情報収集し、作業の効率化を図る。5月18日から21日までの間、広島県福山市にある常石工場で実証実験を実施した(写真1)。

 実証実験では、船の組み立て工程の進捗度を把握するのにドローンを使用した。工場内を飛行させ、搭載するカメラで空から敷地内の様子を撮影(動画)。ドローンが収集した画像データを基に、組立途中の船体の様子を確認して、進捗度を把握する。「作業に遅れがあれば、作業員に指示を出すなどして対策する」 (ツネイシホールディングス CSV本部新事業開発部の金政和宏課長)。

 従来は、作業員が敷地内を歩き回るなどして、工程の進捗度を把握していた。同工場では船体を、「ブロック」と呼ばれる、約200個の組み立てパーツごとに作る。ブロックは、工場の敷地内の所定の場所で建造する。同工場の敷地面積は約50万平方メートルで、船体の大きさは約200メートルにもなる。作業員が人手で、離れた場所にあるブロックの完成度合を確認して回るのは手間だった。

写真2●常石工場で作っている船は全長200メートル程度にもなる。写真はTESS58
写真2●常石工場で作っている船は全長200メートル程度にもなる。写真はTESS58
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 実証実験で使用したドローンは、中国メーカーのDJIが製造する「INSPIRE 1」(写真3)。「バッテリー稼働時間は15分程度だが、造船所での実証実験には十分だった」(ツネイシホールディングス CSV本部新事業開発部の中山元彦氏)という。

 ドローンは4Kの解像度に対応するカメラを搭載しており、操縦者側のiPadでリアルタイムに映像を見られる。iPadに映像を転送するシステムは、ビデオ会議システムなどを提供するブイキューブが構築した。

写真3●造船所の敷地内を飛行するドローン。実証実験ではDJIのINSPIRE 1を使用した
写真3●造船所の敷地内を飛行するドローン。実証実験ではDJIのINSPIRE 1を使用した
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 「造船所の設備点検や火災発生時の調査にも、積極的に活用したい」(ツネイシホールディングスの中山氏)。例えば、工場内に設置しているクレーンなどだ。「大きなものは、高さ約100メートルにもなる」(中山氏)。ドローンを使うことで、人が危険な作業をすることなく点検できるという。