スカパーJSATは2015年5月28日、スカパー!「4Kメディアセッション」を開催した。同イベントで登壇した代表取締役 執行役員社長の高田真治氏は、4K放送の現状や今後について、自らの考えを述べた。

 4K放送の伝送路としては、現在の衛星放送で使われている右旋波用帯域に加えて、今は未使用の左旋波用帯域も候補として浮上している。高田氏は、現在調達を行っている東経110度CS後継機のトランスポンダ(電波中継器)について、「右旋波用のものに加えて、左旋波用も備えている」と述べた。そのうえで、BSを運用している放送衛星システム(B-SAT)について、「おそらくBS後継機に左旋波用トラポンを搭載するのではないか」という考えを示した。

 高田氏は、左旋波用帯域の利用が必要な理由として、既存サービスから新サービスに移行するに当たり二つのサービスのサイマル提供が不可欠になる点を挙げた。「新たな放送はゼロスタートとなるので、サイマル期間がないとビジネスが成立しなくなる。新たな帯域がないと次の段階には行けない」と説明した。そのうえで総務省の「4K・8Kロードマップに関するフォローアップ会合」が策定予定の4K・8Kの新たなロードマップについて、「新たな帯域を準備しながら次の高度化サービスの実現に向けたプロセスをしっかりと描かないといけないと思う」とした。

 左旋波の利用に当たっては、ゼロスタートとなる受信環境の整備が課題の一つとなっている。この点については、「左旋波の受信環境整備が難しいからと置いておくと、今の2K放送の世界にとどまることになる」「長期的な視点の下で受信環境の整備をロードマップ上に描いて、何年後にはほとんどの人が4Kを見ることができる環境を実現する必要がある。そのためにはオールジャパンの体制が必要」などと述べた。さらに「少なくとも2030年までのレンジで方向性を出していただきたい」とした。

 4K放送の推進における地上波の取り扱いも課題の一つになっている。高田氏は、「設備投資や制作面での投資をすれば、必ず報われるというインセンティブを見える形にして投資意欲を増していかないとなかなか進めないのではないか」とした。

 今回のイベントでは、ソニーマーケティングのホームエンタテインメントプロダクツマーケティング部 ディスプレイMK課 統括課長の白拍子誠一氏も登壇し、ソニーの4Kテレビの最新ラインアップについて説明した。スカパーJSATの執行役員常務 放送事業本部長の小牧次郎氏は、同社の4K番組制作の現状などを報告した。