野村総合研究所は2015年5月26日、東南アジア地域のSE・プログラマー人材の市場調査結果を公開した。マレーシア、タイ、フィリピンの人材は、2020年には質、単価ともに、日本に近い先進国水準に近づくと予測する(図1)。
野村総研 ICT・メディア産業コンサルティング部の桑津浩太郎主席コンサルタントは、これらの国のIT人材単価が日本に並んだ後も「多言語を操れるASEANの人材は、アジア・欧米市場向けソフトウエア開発要員として、企業にとって重要であり続けるだろう」との見解を示した。
ASEANのIT人材は、現在は70万人前後で、若者層を中心に年間5万人超のペースで増えている。日本は約85万人のIT人材を抱えるが、平均年齢は40歳代と高めで、流動性も低い。
ASEAN主要7カ国のSE・プログラマー人材は2020年までに100万人超に増え、日本の人材数を追い抜く見通し(図2)。
同社は、ASEANは中国、インドと比べてIT人材資源の規模で劣るが、チームワークやコミュニケーションなどに価値を置く人材を確保しやすいとみる。「特にベトナムやミャンマーは、日本型開発の受け皿として期待できる」(桑津氏)。その一方で、インドネシアなど一部の国ではジョブホップ(SEの転職)が盛んで、長期的に育成には向かない課題もあるという。
<ASEAN主要国のIT人材の傾向>
シンガポール:IT人材は質・単価ともに先進国型並み。「ドイツ語、フランス語、イタリア語を含めた多言語対応の蓄積は圧倒的」(桑津氏)で、欧米市場向けソフトウエア開発に強みがある。有力なASEANのIT事業者はシンガポールに開発拠点を設置している。
マレーシア:中国語(北京語、広東語)と英語の双方が話せる人材を安価に雇用できる。
タイ:これまでIT人材が少なかったが、財閥企業や大企業が人材の育成を進めている。ジョブホップは少ない。
インドネシア:IT人材市場が急速に拡大しているが、多くはスマートフォンアプリかWebアプリの開発に偏っており、業務システム開発の経験は乏しい。ジョブホップは極めて活発で、人材の長期育成が難しい。
ベトナム:ジョブホップが少ないため、人材の長期育成に向いている。日本企業のオフショア拠点としての地位を固めつつある。
ミャンマー:まだIT人材の市場規模は小さいながら、大学などで人材育成が急速に進んでいる。