写真1●約550人の教職員が参加した宮城県の情報化リーダー研修
写真1●約550人の教職員が参加した宮城県の情報化リーダー研修
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写真2●情報化リーダーの役割や心構えについて解説する東北大学大学院の堀田龍也教授
写真2●情報化リーダーの役割や心構えについて解説する東北大学大学院の堀田龍也教授
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写真3●堀田教授は「誰もが真似できる日々の実践例作り」の大切さを強調
写真3●堀田教授は「誰もが真似できる日々の実践例作り」の大切さを強調
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 宮城県教育庁教育企画室は2015年5月25日、教育現場のICT活用を推進する情報化リーダー向け研修会を開催した。県内の公立小中学校・高校で情報化を推進している教職員や教育委員会の担当者など約550人が参加した(写真1)。教育現場の情報化に関する教職員研修を、500人を超える規模で一斉に実施するのは全国的にも珍しい。

 今回の研修に参加した情報化リーダーは、在籍する学校で教職員向けの研修を実施したり、今後のICT活用計画を立案・推進したりする。そこで今回の研修では、情報化リーダーの役割や心構え、情報化を進める上で注意すべき著作権やセキュリティについての講演が設けられた。

 情報化リーダーの役割や心構えについての講演では、東北大学大学院情報科学研究科の堀田龍也教授が登壇した(写真2)。堀田教授が特に強調したことは、「情報化リーダーの振る舞いが(ICT活用の)普及の成否を決める」ことである。教育のICT活用を進めるとなると、タブレットなどを活用した「先進的な授業開発」に注力しがちだ。だが、それでは他の先生や生徒はついて行けないことがある。「誰もが真似できそうな日々の実践例を数多く作りだすことが肝心」(堀田教授)と指摘した(写真3)。

 堀田教授は「教育現場のICT活用には段階がある」と言う。例えば、これまで生徒が自発的に考え行動するような学びの環境(授業のスタイルや学校の風土など)がない学校に対し、「いきなりタブレットやPCを導入して、自発的に調べたり考える授業をしましょうと言ってもできるわけがない」(同)。その上で、国内事例を交えながら「一足飛びに最先端のICTを導入するのではなく、実物投影機(書画カメラ)を使って授業ができる環境を整備するだけでも、教え方や学び方が大きく変わる」と解説した。

 情報化を進める上で注意すべき著作権やセキュリティについては、講師役として日経BP社コンピュータ・ネットワーク局教育事業部の中野淳部長が登壇。著作権法に違反する可能性が高いケースとして、独自教材の共有や学習成果物を公開、教職員研修などを解説した。

 教育現場でのICT活用が進むと、手軽に他人の情報(著作物)を入手したり、情報を発信できるようになる。中野部長は「まずは教職員が著作権法を正しく理解する必要がある」と指摘した。その上で、「著作権法の判断に迷ったら、利用したい著作物の権利関係者(出版社や著作者など)に聞いてみることが、実は一番の近道でしかも安全。出版社などはホームページ上で問い合わせ窓口を用意している。学校教育での利用となれば、意外とすんなり利用許可を得られこともある」と助言した。