帝人は2015年5月25日、ベンチャー企業のタグキャストなどと共同でシート状のビーコン「PaperBeacon(ペーパービーコン)」を開発したと発表した。テーブル表面に貼り付けておき、利用者がテーブルに置いたスマートフォンを認識できる。大人数が集まる場所でテーブルごとに異なる情報を配信するといった、既存のビーコンでは難しい処理を可能にした。飲食店のテーブルに敷設し、客がセルフサービスで注文から決済までを終えるといった用途を想定する。6月1日から国内で販売する。国内外で販売し、2019年度に20億円の売上高を目指す。

写真1●タグキャストの鳥居社長(左)、帝人の平野氏(中)、セルクロスの浅村直也社長(右)
写真1●タグキャストの鳥居社長(左)、帝人の平野氏(中)、セルクロスの浅村直也社長(右)
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 ペーパービーコンは、帝人とタグキャスト、そしてセルクロスの3社で共同開発した。タグキャストは省電力の近距離無線通信「Bluetooth Low Energy(BLE)」を使ったビーコンの開発と運用を、セルクロスはシート表面から薄く均等に電波を発する通信技術の開発を、それぞれ手がける。これらの技術に帝人のシート製造技術を組み合わせ、ペーパービーコンを開発した(写真1)。

 「利用者のスマホをテーブルに置くだけで、テーブルに応じた機能を提供できる」(タグキャストの鳥居暁社長)。従来のビーコンはある地点に近づいたり端末機器にかざしたりしたスマホを認識する方式だった。

 飲食店のほか、企業の会議室でスマホをテーブルに置いたときだけ特定の資料を見せる、塾で生徒がテーブルにスマホを置いて出欠確認や宿題の提出をする、といった用途を想定する。

写真2●テーブルに置いたスマホを認識して情報を配信する
写真2●テーブルに置いたスマホを認識して情報を配信する
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 帝人の平野義明新事業推進本部スマートセンシング事業推進班長は、「国内外を問わずペーパービーコンを販売する」と話す。既に米国のベンチャー企業が、ペーパービーコンを使った飲食店向けの注文管理システムの開発に取り組んでいるという(写真2)。

 ペーパービーコンの価格は初期費用が5000円、月額費用が800円など。内蔵の電池で約1年間稼働する。