図1●ビッグデータのインフラ市場は、2014年から5年間にわたり年率27%ペースでの成長を見込む
図1●ビッグデータのインフラ市場は、2014年から5年間にわたり年率27%ペースでの成長を見込む
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図2●「ビッグデータ」という言葉の認知度は前回調査からほぼ横ばいだった
図2●「ビッグデータ」という言葉の認知度は前回調査からほぼ横ばいだった
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図3●大企業中心にビッグデータへの取り組みが進む一方、中堅・中小では「予定なし」との回答が急増した
図3●大企業中心にビッグデータへの取り組みが進む一方、中堅・中小では「予定なし」との回答が急増した
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図4●ビッグデータへの課題は「人材不足」「予算不足」がともに4割超。既に取り組みを始めている企業でも3割前後が悩みを抱える
図4●ビッグデータへの課題は「人材不足」「予算不足」がともに4割超。既に取り組みを始めている企業でも3割前後が悩みを抱える
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 市場調査会社のIDC Japanは2015年5月21日、ビッグデータの分析に使われる情報システムなどのインフラの国内市場が2019年に1469億円に上るとの見通しを発表した。14年時点の444億円から、年平均成長率27%のペースで拡大を続ける(図1)。一方で足元では認知度や導入検討の伸びに陰りもみられ、今後の成長にはオフショアによるデータサイエンティストの確保や安価なクラウドベースの分析サービスの広がりが不可欠だとする。

 同社が14年12月~15年1月に国内企業を対象に実施したアンケートを基に市場規模を推計した。14年の市場規模は対前年度比39.7%増の444億700万円。分野別では、サーバー機などを含む「インフラ」が同48.9%増の185億7400万円と高い伸びを示した。「ソフトウエア」「サービス」もそれぞれ同3割程度の伸び。ビッグデータ市場の興隆期に市場をけん引した情報・通信やインターネット関連企業だけでなく、ここ2年ほどは製造業やサービス・小売などの大企業の間でビッグデータへの関心が高まり市場が拡大した。

 市場規模において急成長を見込む一方、同社は今後のビッグデータ市場を巡り複数の懸念材料があるとする。1つめは「ビッグデータ」という言葉に対する認知が進んでいない点だ。ビッグデータの認知度は57.9%で、2014年の前回調査(58.7%)から横ばい(図2)。情報システム部門における認知度は89.8%と高いが、それ以外の部門では56.2%にとどまった。

 2つめはビッグデータに対する取り組みの有無で二極化が進んでいる点だ。ビッグデータに対し何らかの取り組みを「既に利用/提供中」または「検討中」とした企業は32%で前回調査(28.6%)から小幅に増えた(図3)。一方で「当面取り組む予定がない」とした企業は55.9%で前回調査(39.8%)から16ポイントも増え、「分からない」が12.1%と前回調査(31.6%)から20ポイント近く減った。

 同社 ソフトウェア&セキュリティ マーケットアナリストの草地慎太郎氏は「大企業に限れば4割が取り組んでおり徐々に増えているが、それ以外は自社の事業モデルに照らして不要だと判断する会社が増えているのだろう。今後ビッグデータ市場を拡大するには、必要性を感じていない中堅以下の企業をどう取り込むかが課題になる」と語る。

 3つめは専門家や予算といったリソースの不足だ。複数回答でビッグデータ活用に向けての課題を尋ねたところ「分析スキルを持つ人材の不足」が43.7%で首位となり、次いで「予算が不十分」が41.5%となった(図4)。

 人材不足の解決策について草地氏は「データサイエンティストの不足は国内企業全般に及んでいる。教育は中長期かかる上に日本は人件費が高いので1~2年では改善しないだろう。幸い、データ解析は数字が中心で言葉の壁が比較的低い。オフショアなども含め人材確保を考えることが必要だ」と指摘する。予算の問題については「中堅・中小企業への導入を視野に入れ、大規模なシステム構築だけでなくクラウドを活用した軽いプラットフォームを提供する必要がある。クラウドベースのビッグデータ分析サービスは外資系が先行しており、国内のSIベンダーがビッグデータ分析のクラウドサービスを拡充できるかどうかがポイントになる」とした。

 今回の調査で集計対象としたビッグデータのインフラとは、データの集約/分析に使われるサーバー機やソフトウエア、クラウドサービスなどを指す。データの収集用のスマートフォンやセンサー類、あるいはデータそのものの売買によるビジネスは含まない。また今回の調査ではビッグデータの規模やデータ構造、分析手法などは特に規定していない。