NTTデータは2015年5月18日、3次元(3D)地図サービスでより高精細なデータの提供を始めたと発表した。従来の地図データは地表を5メートル四方で区切っていたが、新たに2メートル四方の地図データを作成。これまで難しかった建築物の識別も可能にした。新興国向けの地図整備や防災、資源開発といった用途に加え、先進国の都市開発などへ用途を広げる。

 2014年2月に提供を始めた「全世界デジタル3D地図提供サービス」に、新たなデータを追加した。同サービスは世界の企業や公共機関などに3Dの地図データを販売するもので、一般財団法人リモート・センシング技術センター(RESTEC)と共同で運営している。世界の約6割の地域について、解像度が5メートル四方の3D地図データを提供してきた。

写真1●「ただ見るだけから様々な用途に『使える』地図にしていく」と語るNTTデータの筒井課長
写真1●「ただ見るだけから様々な用途に『使える』地図にしていく」と語るNTTデータの筒井課長
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 今回、新たに提供を始めた2メートル四方の地図データを使えば、「建築物の1棟ずつの高さまで表現できる」(NTTデータで同事業を担当する筒井健課長、写真1)。例えばエベレスト山の3D地図ならば氷河の起伏を一つひとつ表示(写真2)するといった「ほぼ実写に近い映像が提供できる」(同氏)。5メートル版を提供するまでは、地形の概況が分かる程度の90メートル四方の地図が一般的だった。5メートル四方でも地形の起伏を把握できるなど、詳細な地図作成が可能である。

写真2●実写に近いエベレストを再現できる
写真2●実写に近いエベレストを再現できる
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 具体的な用途としては、まず防災地図の作成や資源探査、衛生・疫病対策を想定する。例えば世界保健機構(WHO)が伝染病「ポリオ」ウイルスの感染源を調べるために、既存の5メートル版データを活用。感染源となる下水を採取する地点を特定するために、地形の起伏を調べて下水がたまりやすい場所を見つけ出した。

 今後は先進国向けに、都市部の道路や鉄道などのインフラ整備、携帯電話の電波シミュレーションといった用途も開拓する。3Dプリンターで地図の立体模型を作成するためのデータも、併せて販売する。

 2メートル四方版の料金は1平方キロメートル当たり1万1000円から。最低25平方キロメートル分から販売する。NTTデータによれば、同水準のデータを作成する従来の手法に比べて費用を4~5分の1に低減できるという。2015年度中に累計で15億円の売り上げを目指す。