スパコン開発ベンチャーのPEZY Computingは2015年5月8日、磁界結合による近接チップ間無線通信技術「ThruChip Interface(TCI)」の独占的実施権を持つ米スルーチップ・コミュニケーションズを完全子会社化すると発表した。2015年6月末までに支配株式の3分の2強を、2016年2月までに全株式を買い取る。

 TCIは、現行のDDR4 DRAMより100倍高速なメモリーインタフェースの実現に向けた鍵となる技術(関連記事:100倍高速なメモリーを独自開発、異色ベンチャーの野望)。PEZYは、開発中のメニーコアプロセッサ「PEZY-SC2」とDRAMを接続するインタフェースとして同技術を採用するほか、他の半導体会社などにも広くライセンスする。スルーチップCEO(最高経営責任者)のデビッド・ディッツェル氏はPEZYの技術顧問となる。

 スルーチップ・コミュニケーションズは、TCIに関する慶應義塾大学の黒田忠広教授の研究成果を踏まえ、同技術の普及のため2007年に設立された。かつて「Crusoe」や「Efficeon」といったx86互換プロセッサを開発した米トランスメタ創業者のディッツェル氏が共同創業者でCEOを務めている。PEZYはディッツェル氏と8年間の技術顧問契約を締結した。TCIに加え、プロセッサの開発でも同氏の経験や人脈を活用する。

 さらにPEZYは、基板と基板の間でデータを送受信するインターコネクトや、異なる半導体製造プロセスで作った複数のダイ(シリコンチップ)を一つのパッケージに納める際に必要なダイ間の接続に、TCIを適用する考え。実現すれば、前者はスパコン演算性能のボトルネックになりがちだったインターコネクトの高速化・低遅延化に、後者は最先端プロセスによる大規模回路に取って代わる安価かつ多様なプロセッサの開発につながりそうだ。

PEZY Computingのリリース(PDF)