図●式と業務データに注目して複雑度を解析する(富士通の資料から引用)
図●式と業務データに注目して複雑度を解析する(富士通の資料から引用)
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 富士通は2017年3月までに業務アプリケーションの保守作業を効率化する解析サービスの提供を始める。プログラムを自動解析して業務ロジックの複雑度を自動的にはじき出す。大規模システム向けで、大量のプログラム資産から重点的に保守するべきプログラムを絞り込みやすくなるという。提供価格は個別見積もりとなるが100万円以上とみられる。

 富士通研究所がこのほどCOBOLプログラムを対象とする解析技術を開発した。プログラム中で「金額」や「会員区分」といった業務で使うデータを計算したり判断したりする「業務ロジック」を自動的に識別できる解析技術で、同社によれば世界で初めてという。

 複雑度を数値化するに当たっては、業務データを含む条件式や計算式の出現回数、ならびに式が含む業務データの項目の出現回数などを基にして計測する()。従来は条件分岐の数やプログラムの大きさなどを基に複雑度を計測することが多かったが、業務ロジック以外の部分(画面表示やデータの初期化など)も計測されてしまうため使いにくかったという。

写真●富士通研究所 システム技術研究所 基幹系ソフトウェア開発技術プロジェクトの松尾昭彦主管研究員(左)と上村学研究員
写真●富士通研究所 システム技術研究所 基幹系ソフトウェア開発技術プロジェクトの松尾昭彦主管研究員(左)と上村学研究員
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 富士通研究所は足かけ2年をかけて解析技術を完成させた。開発を指揮した松尾昭彦 システム技術研究所 基幹系ソフトウェア開発技術プロジェクト 主管研究員は「1200本のCOBOLプログラムから成る社内の業務アプリケーションで試行したところ、有用性が確認できた」と話す(写真)。「業務ロジックの複雑度が高いプログラムは業務アプリケーションの中核部分に該当することが分かり、3割の行数は業務上の判断や計算を含んでいないことも分かった」(同)。

 富士通研究所は今後、業務アプリケーション同士がどの程度複雑に連携しているかを可視化する「ソフトウェア地図」と呼ぶ既存サービスと今回の解析技術を連携させる計画。解析技術そのものは他の開発言語にも広げるという。

 新技術はプログラムの本数が多いほど分析にかけるコストの削減効果を期待できる。富士通は顧客の大規模システムの保守を効率化する用途に加え、他社が開発した大規模システムの保守を受託するサービスでも新技術を活用していくとみられる。