写真●シャープ、通信システム事業本部、モバイルソリューション事業部、事業部長の辰巳剛司氏
写真●シャープ、通信システム事業本部、モバイルソリューション事業部、事業部長の辰巳剛司氏
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 シャープは2015年4月23日、学習者の理解度に応じて指導問題の構成を変えられる個別学習システム「STUDYFIT」を発表した(写真)。学習者は、ひとり一台のタブレット端末を使って、自分向けに用意された指導問題に取り組める。教材は今のところ学校教育向けに限っており、第一弾として小学校5年生向けの国語と算数の教材を用意する。5月から商談を開始する。

 学習者の能力を調べる学力診断テストの結果に応じて、弱点を補強する指導問題を自動的に構成する。取り組める指導問題の数はすべての学習者で共通だが、どの難易度の問題から取り組めばよいのかを各学習者に伝える仕組み。指定された問題から順番に取り組むことにより、理解度に合わせた適切な学習ができる。図形問題などの個々の学習分野ごとに理解度を調べ、それぞれの分野において最初に取り組む問題を指定する。

 第一弾で提供する小学校児童向けの指導問題は、問題集やプリント教材などを手掛ける日本標準が開発したもの。シャープは教材コンテンツの制作ソフトを提供しており、日本標準がこれを使って制作した。指導問題は簡単な問題から比較的難しい問題まで全部で1352問(記述式が776問、選択肢式が576問)ある。実際の運用では、各学期のはじめに学力診断テストを実施し、その後は指導問題に取り組む。

 教材の特徴の一つは、タブレット画面に手書きで解答できること。記述式の問題において、漢字や文章(画面1)、算数の計算式(画面2)を書き入れられる。デジタル教材でありながら、紙のプリントと同じような学習体験ができる。

画面1●文字を手で書ける
画面1●文字を手で書ける
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画面2●計算式を手で書ける
画面2●計算式を手で書ける
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 もう一つの特徴は、ネットワークを介して教材を配信する必要がなく、解答を送信する時だけネットワークにつなぐ方式としたこと(画面3画面4)。教材はHTML5コンテンツとして実装しているが、USBメモリーやSDカードなどを介して個々のタブレットのストレージ領域にインストールして使う。

画面3●教材はタブレットに入っている
画面3●教材はタブレットに入っている
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画面4●解答を送信する時だけ通信する
画面4●解答を送信する時だけ通信する
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 既存の学習カリキュラムへの影響が小さいことも特徴だ。指導問題は1回当たり5分から10分程度で解答できるので、毎朝決まった時間など、隙間の時間に取り組める。採点も自動で行うので、先生の負担が小さい。管理画面では、児童ごとの解答状況がグラフで分かるほか(画面5)、誤答が多い問題などをリストアップできる(画面6)。

画面5●どの問題を間違えたかが分かる
画面5●どの問題を間違えたかが分かる
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画面6●誤答の多い問題が分かる
画面6●誤答の多い問題が分かる
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 参考価格(税別)は、児童1人当たり年額5000円で、先生が使う管理用のサーバーソフトは30万円。販売目標は2016年度に100自治体。販売面では日本マイクロソフトが協力する。例えば、STUDYFITの評価版をMicrosoft Azure上に用意する。

 今後は、教材を拡充する。2016年度には、小学5年生向けだけでなく、3年生から6年生までの指導問題を提供する。さらに、国語と算数だけでなく、他教科にも広げる。日本標準とは別の教材提供会社とも提携し、中学校や高校向けの教材も用意する意向。

 シャープでモバイルソリューション事業部長を務める辰巳剛司氏は、学校教育におけるデジタル教材の課題を解消するためにSTUDYFITを開発したと説明する。辰巳氏が挙げる課題は、(1)教材が不足していること、(2)ネットワーク容量が細くてリッチな教材を配信しにくいこと、(3)先生の仕事に負荷を掛けてしまうこと、(4)通常授業のカリキュラムに影響を与えること――だ。STUDYFITで、これらの課題を解決できるとしている。

■変更履歴
第7段落で児童1人当たりの価格を月額5000円としていましたが年額5000円の誤りです。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。[2015/04/24 12:30]