住宅の基礎の部分に、3軸加速度センサーを内蔵した地震計を取り付ける。当面はミサワホームの新築住宅向けに提供する
住宅の基礎の部分に、3軸加速度センサーを内蔵した地震計を取り付ける。当面はミサワホームの新築住宅向けに提供する
[画像のクリックで拡大表示]
居室内のディスプレイ部に揺れと倒壊危険度などを表示する
居室内のディスプレイ部に揺れと倒壊危険度などを表示する
[画像のクリックで拡大表示]
ミサワホーム側の管理コンソールの画面。各地の住宅からLTE回線経由で送られてきたデータが地震直後に集まり、被害状況が迅速に把握できるとする
ミサワホーム側の管理コンソールの画面。各地の住宅からLTE回線経由で送られてきたデータが地震直後に集まり、被害状況が迅速に把握できるとする
[画像のクリックで拡大表示]
検出した揺れの情報を各戸の構造計算情報と突き合わせ、倒壊危険度を算出する
検出した揺れの情報を各戸の構造計算情報と突き合わせ、倒壊危険度を算出する
[画像のクリックで拡大表示]
倒壊危険度と地盤の傾きをランク付けし、一定以上の値になると避難や点検を促す
倒壊危険度と地盤の傾きをランク付けし、一定以上の値になると避難や点検を促す
[画像のクリックで拡大表示]
緊急地震速報では間に合わない、直下型地震の直前の警報も対応できる可能性があるという
緊急地震速報では間に合わない、直下型地震の直前の警報も対応できる可能性があるという
[画像のクリックで拡大表示]

 ミサワホームは2015年4月22日、木造住宅用の地震計「GAINET」を4月下旬に発売すると発表した。KDDI(au)のLTEモジュールを内蔵しており、各戸の揺れの度合いや構造計算データと照合した倒壊危険度などを、地震発生後30秒程度でクラウド上のサーバーに集約できるのが特徴。ミサワホームによると、戸建て住宅の被災度合いを計測できる機器を量産するのは国内初という。

 大規模な震災の発生直後は道路や通信回線が寸断され、被害状況の把握が難しい。同社では各戸の揺れや倒壊危険度をビッグデータとして収集・集約することで、従来より的確に広域の被害状況を把握でき、各戸の修繕の必要性なども迅速に判断できるとする。住民にとっても直下型地震の直前に警報を受けられるほか、震災直後に自宅待機できるか避難すべきか判断できるメリットがある。価格は工事費と5年間の通信費込みで13万3000円から。同社の新築木造住宅向けに提供し、「当面はアメダスの設置箇所数の1300カ所を超えるのが目標」(ミサワホームの向山孝美商品開発部長)という。

 住宅の基礎に取り付ける地震計本体と、室内に取り付けるディスプレイ部から成り、両者を同軸ケーブルで接続してある。地震計内部には3軸加速度センサーがあり、地震の初期微動(P波)を検知して警報音と画面表示、LEDにより警告を出す。気象庁の緊急地震速報と似た機能だが「緊急地震速報は直下型地震で本格的な揺れ(S波)が来るのに間に合わない。GAINETは自宅の地震計で検知しその場で演算するので、直下型地震でもS波に先駆けて警告できる可能性がある」(ミサワホームの向山部長)。

 地震が収まると、家屋の倒壊危険度と地盤の傾きのデータをLTE回線でクラウド上のサーバーに送信する。GAINETには各戸の新築時にミサワホームが算出している構造計算データを登録してあり、揺れのデータと突き合わせることで各戸の倒壊危険度を高精度に算出できるとする。併せて各戸のディスプレイ部には倒壊危険度と傾きのそれぞれのランクを表示し、一定以上のランクの場合は「倒壊の恐れあり。避難を」「専門家の点検を」などと表示する。

 震災後の通信回線の輻輳については「大規模な震災時も通信回線が輻輳するまでに数十分の余裕があるため、データは問題なく送信できる」(ミサワホームの向山部長)とみている。基地局や中継回線の途絶などでLTEが不通の場合は約900回分の地震データを蓄積でき、停電の場合も30分程度は内蔵電源で動作を継続できる。LTEモジュールはディスプレイ部に内蔵しており「LTEモジュールが故障したり、LTEサービス自体が停波したりする場合は、ディスプレイ部を交換することで対応できる」(ミサワホーム)という。

 LTE回線はKDDIがミサワホーム子会社のメディアエムジーに卸売りし、メディアエムジーから各戸に提供するB2B2C方式とした。「トヨタ自動車のクルマ向け通信サービス『T-Connect』と同様のスキーム」(KDDI)。5年経過後の通信料は未定だが「月額数百円程度になるだろう」(ミサワホームの向山部長)とする。スマートフォンなどと同様、LTE回線経由でのソフトウエアアップデートが可能で、今後は揺れを検知したらドアや窓を自動開錠したり、自宅の被災状況をスマートフォンに送信したりといった機能拡張を計画している。また、小規模な地震での揺れデータを蓄積して、大規模地震時の倒壊危険度を予測する耐震診断サービスも検討中だ。

地震計でもビッグデータ革命