毎日放送は2015年4月20日、災害時でも確実に放送を継続できるようにテレビマスターや回線センターなどの中枢機能を、耐震構造の本館(M館)から、より安全性の高い免震構造の新館(B館)へ移転更新し、新館屋上に非常用送信設備を新設した。また、津波や集中豪雨による浸水に備えて、新館の高層階に電源設備を設置し、非常用発電機を用いて無給油で1週間程度の放送継続が可能にするなど、放送継続に向け体制をより強固なものにした。

 新テレビマスターは、おもに「マスターシステム」と「バンクシステム」で構成される。放送はすべてコンピュータ(APS:自動番組送出装置)による自動制御で行う。マスターシステムを3重化、バンクシステムを2重化構成とすることで、万が一の故障時にも即座に予備へ切り替えて放送を継続できる設計とした。

 生放送番組にリアルタイムで字幕をつける需要が急速に高まっていることを受け、全てのスタジオおよび回線素材の入力系統に字幕インサータを設備し、より多くの番組で字幕を送出できるようにした。

 ファイルメディアのXDCAM によるダイレクト送出にも対応。このダイレクト送出システムを利用して、番組本編、CM、提供テロップなどに字幕や局間信号も加えた、本放送とまったく同じバックアップ素材を事前に作成することで、万一の機器故障でも放送を継続できるようにしている。

 テレビマスターとともに、番組・CMの放送データと営業管理データを一括処理する営放システムと、本社から生駒送信所へ放送信号を無線伝送するSTL設備も同時に更新した。

 一新した営放システムでは、HDTV+SDTVのマルチチャンネル放送、ワンセグ2サービスのデータ設定を可能にした。また、CM素材の連続プレビュー機能や、ACジャパンCMへの差し換えを簡便に行える機能など、既存機能のブラッシュアップを中心に開発した。

 新回線センターは、館内の各所へ映像信号を分配するメインスイッチと様々な映像伝送回線を一括管理するブッキング・システムを一新し、日々の報道・スポーツ・番組制作に必要な各地からの映像を円滑に利用できる体制を構築した。

 災害時に重要となるSNGの送受信アンテナを新館(B館)に新設、地上伝送ではFPUの受信設備を新館鉄塔に新設した。連絡無線では、生駒山、六甲山、比叡山の基地局設備を更新することで、電話回線が切断されるなど外部との通信手段が絶たれた状況でも、自営の設備で回線構築が可能な体制を強化した。