写真1●IoT関連ビジネスについて説明する米PTCのロバート・ラナルディ ワールドワイドセールス&ディストリビューション部門上級副社長
写真1●IoT関連ビジネスについて説明する米PTCのロバート・ラナルディ ワールドワイドセールス&ディストリビューション部門上級副社長

 PTCジャパンは2015年4月15日、事業戦略説明会を開催した。CAD(コンピュータによる設計)ソフトのPTC CreoやPLM(製品ライフサイクル管理)ソフトのPTC Windchillといったこれまで提供してきた製品・サービスにとどまらず、IoT(モノのインターネット)関連事業にも本格的に乗り出すことを明らかにした。

 IoTのグローバル戦略について、米PTCのロバート・ラナルディ ワールドワイドセールス&ディストリビューション部門上級副社長は、「2015年度はグローバルで200社の企業に、IoTを導入していく」と明かした(写真1)。

 その目標を達成する手段を、米PTCは手にしている。2013年には、様々な機器から集めたデータを活用する「IoTアプリケーション」を、高速開発できる開発運用基盤を提供しているThingWorxを買収。2014年には、遠隔でネットにつながった様々な機器に対して、モニタリングなどを行えるクラウドサービスを手掛けるAxedaを買収。これら2社のサービスを軸に、既存の製品やサービスを必要に応じて組み合わせながら提供していく。

 ラナルディ上級副社長は「導入企業数の目標は、昨年のIoTへの関心度などを踏まえて設定した。必ず達成できるとみている」と話す。一般に、IoT導入に興味を示している企業として、販売した製品のサポートサービスにIoTを導入することで付加価値サービスを作っていきたい建機や農機メーカーなどが思い浮かぶ。

 ところが米PTCはそういった企業にとどまらず、医療業界にもIoTを積極提案。導入を目指していくという。「現場には、様々な医療機器が導入されている。現場にある医療機器にIoTを導入していけば、患者に対してこれまでにない手厚いサービスを提供できる」(ラナルディ上級副社長)からだ。米国などでは、手厚い医療サービスには高い料金を設定できるといった背景もあっての事業戦略といえる。

写真2●国内の事業戦略を語るPTCジャパンの桑原宏昭社長
写真2●国内の事業戦略を語るPTCジャパンの桑原宏昭社長

 日本でもIoTの導入提案を今後積極的に進めていく。PTCジャパンの桑原宏昭社長は「当社のCADソフトであるCreoの導入をきっかけに、PLM製品のWindchillなどと合わせてIoTを提案していきたい。これまで顧客ではなかった製造業や非製造業に向けては、IoTを切り札にアプローチしていく」と話す(写真2)。

 IoTで攻勢をかけることができるのは、CADやPLMなど従来ビジネスが好調だという背景がある。PTCジャパンが2014年に従来ビジネスで獲得した新規顧客企業数は130社以上。2013年の120社を上回った。

 その原動力になっている製品の1つが、PLMソフトのWindchillだ。製造業が社内に持つ製品設計書などの成果物データを一元管理するもので、開発部門や製造部門など複数で情報を共有できるようにする。

 この製品が今、好調だ。「製造業では、コアとなる部分は日本の開発部門が設計を担当し、海外の開発部門が各市場に合わせて、日本の設計内容をカスタマイズしていくグローバル設計開発体制づくりが進んでいる。その成果物を含む情報を共有するツールとしてWindchillに注目が集まっている」と、桑原社長は説明する。

 さらに、これまでハードウエアが中心だった製品にソフトウエアが占める割合は急増。ハードとソフトを連携させながら設計していく難しさが、製造業の現場で大きな課題になっている。このことも、製造業がWindchillの導入に動く背景にあるという。

 今後は、Windchillを中堅製造業にも広く提案していくことで、「2015年度いっぱいで、国内におけるWindchill関連事業を2倍に成長させる」と、桑原社長は見通しを語る。