写真1●発話の内容を時系列に表示しているところ。認識ミスや誤変換を適宜修正する機能もある
写真1●発話の内容を時系列に表示しているところ。認識ミスや誤変換を適宜修正する機能もある
[画像のクリックで拡大表示]
写真2●LiveTalkのデモの様子。パソコンに接続したマイクに向かって離す
写真2●LiveTalkのデモの様子。パソコンに接続したマイクに向かって離す
[画像のクリックで拡大表示]

 富士通と富士通ソーシアルサイエンスラボラトリは2015年4月14日、発話内容をテキスト化することで聴覚障害者の会議参加を容易にするソフトウエア「FUJITSU Software LiveTalk」(以下、LiveTalk)を発表した。音声認識技術を用いて参加者の発言内容をリアルタイムに文字で表示し、音声が聞き取れない人でも会議や打ち合わせの流れをスムーズに把握できるのが特徴。18歳以上の聴覚障害者は全国に約27万6000人いるとされ、そのうち従業員5名以上の事業所で働く人は5万人以上。健常者と同等に意志の疎通を図りやすくすることで、活躍の場を広げるのが狙い。1年間で2000ライセンスを販売することを目指す。発売は2015年5月中旬。

 LiveTalkは、パソコン上で動作するソフトウエア。会議参加者のパソコン同士を無線LANで接続し、個々の発話の内容を交換し合うことで全員の発話を時系列に表示する仕組み。音声認識エンジンは搭載しておらず、アドバンスト・メディアの音声認識ソフトウエア「AmiVoice SP2」と組み合わせて利用する。

 会議を実施する際は、会議参加者一人ひとりにLiveTalkとAmiVoice SP2をインストールしたパソコンを用意する。パソコンにマイクを接続して発話すると、AmiVoiceがテキストに変換。これを受け取ったLiveTalkが、その内容を他のパソコンに送信する。こうして、全ての発話者と発話内容が各自のパソコン上にリアルタイムに表示される(写真1、写真2)。これを見れば、誰が今どんな発言をしているかが分かる。

 聴覚障害者も、キーボードから文字を入力することで発言が可能。「スタンプ」と呼ぶイラストを使ったコミュニケーションもできる。

 富士通 グローバルマーケティング本部 総合デザインセンターの森淳一部長は「聴覚障害を持つメンバーにとって業務上最も支障を感じるのが、会議や打ち合わせだ」と話す。大型の会議などでは発言をテキスト化して表示するなどの取り組みが進んでいるが、日常業務の中で開催される小規模な打ち合わせでは難しい。全員の発言内容をテキスト化するのは負荷が高く、聴覚障害を持つ社員は会議に参加メンバーとして呼ばれにくい、といった問題があった。

 問題の解決を狙って開発されたのがLiveTalkで、実際に聴覚障害を持つ社員も開発に加わった。聴覚障害者が手軽に発言しやすくするなど、当事者だからこそ必要性が高いと感じる機能を盛り込んだ。製品発表会には聴覚障害を持つ開発メンバーも登場。「以前は会議の内容を後になってから知ることが多かった。LiveTalkが入ってから、その場で会話に参加できるようになった」とメリットを語った。

 同様の製品は他社も発売しているが、LiveTalkとは異なりサーバーで音声認識を実行する仕組みが多いという。LiveTalkはパソコンで音声認識をする分、遅延が少なく会話の内容をリアルタイムに把握しやすい。将来的には、スマートフォンへの対応も検討している。

 LiveTalkのみの価格(税別)は、1セット(5ライセンス)で20万円。追加は1ライセンス当たり5万円。これとは別に、利用人数分のAmiVoice SP2(実勢価格は1万8000円前後)やマイクなどが必要。