図●今回の不正送金ウイルスの感染分布(警視庁のウェブサイトより引用)
図●今回の不正送金ウイルスの感染分布(警視庁のウェブサイトより引用)

 警視庁は2015年4月10日、インターネットバンキングから不正に送金するウイルスに関して、被害と感染端末を撲滅する「ネットバンキングウイルス無力化作戦」を始めたと発表した。対象は国内外8万2000台の感染パソコン。日本独自で大規模なボットネット(感染端末のネットワーク)のテイクダウン(撲滅)に取り組むのは初めてという。

 同庁サイバー犯罪対策課は日本の金融機関を標的にする不正送金ウイルスに感染するパソコンの情報から、同ウイルスに感染する約8万2000台のパソコンを特定した。同ウイルスは日本での感染が多く、感染台数は国内で約4万4000台、海外で約3万8000台だった()。不正送金対策技術を持つセキュアブレインと協力して、これら感染済みのパソコンでも不正送金できないように対策を講じたという。併せて総務省や日本データ通信協会テレコム・アイザック推進会議と連携し、感染パソコンの利用者にウイルスの駆除を依頼しているという。

 警察庁によると、2014年の不正送金ウイルスによる被害は、件数で2013年比1.4倍にあたる1876件、被害額で同2倍の約29億1000万円にのぼった。法人向けで被害が拡大した。不正送金先の口座名義人は64%が中国人、28%が日本人だった。不正送金ウイルスはパソコンに感染すると、利用者がインターネットバンキングにログインし、ワンタイムパスワードや第二パスワードを入力して送金するタイミングを狙いすまし、送金先などを書き換える。