電通国際情報サービス(ISID)と人工知能(AI)によるデータ解析サービスを手掛けるUBICは、Webサイトの訪問者に対しお薦め商品を提示するシステムを試作した。AIを使い訪問者のし好を学習させることで一般的なリコメンドエンジンよりお薦めの精度を高められるほか、書籍のし好を基にお薦めの宿泊施設を提示するなど学習結果を別ジャンルの商品にも転用できることが特徴。ECサイトの「お薦め」機能に加え運用型広告の精度向上にも適用可能とする。近く実際のECサイト上で実証実験を展開し、2015年内の本格提供を目指す。

 同システムはお薦め商品を推測・提示するために、ECサイト内のユーザーレビューや商品説明などのテキスト情報を使用する。まず、Webサイト訪問者のし好を学習するため、そのサイトに掲載されている数件のユーザーレビューを訪問者に見せ「好み」「好みでない」のいずれかで回答してもらう。すると同システムのAIは、訪問者が「好み」としたコメントを解析し、文章構造と単語を抽出して学習していく。次に同システムは、Webサイト訪問者が探そうとしている商品のユーザーレビューとAIの学習結果を照合し、類似性のスコアが高い商品をWebサイト訪問者に提示する。

 例えば宿泊予約サイトならば、他のユーザーが残したレビューのうちWebサイト訪問者が「好み」と答えたものから、「部屋-広い」「部屋-快適」「値段-高い」「ベッド-3つ」など評価に関係しそうな単語を抽出・蓄積し学習していく。

 現状ECサイトでは、年齢・性別や商品の閲覧・購入履歴を基にWebサイト訪問者の属性を推測し、類似属性の人たちが過去に取った行動を訪問者に提示する協調フィルタリング型のリコメンドエンジンが広く使われている。

 今回のシステムと協調フィルタリングとの違いについて「属性情報は個人のし好を直接示すわけではなく、協調フィルタリングの精度は低い。一方でAIを使う今回のシステムは利用者たちの意思を反映できるため、例えば『黒沢作品からインスパイアを受けた米映画監督によるSF映画』を基に『黒沢明監督の映画』をお薦めすることも可能だ。試作したシステムを社内で評価したところ、Webサイト訪問者の潜在的な好みに合う商品を提示する率が協調フィルタリングに比べ圧倒的に高かった」(ISIDの荻原克行データソリューション開発部長)とする。

 また協調フィルタリングとの違いとして、AIを使う今回のシステムは商品ジャンルをまたいだお薦めの提示ができることを挙げる。「あらゆるジャンルをまたいでお薦めを出せるわけではないが、例えば小説を基に学習すれば『冒険好き』『物静か』といった性格を読み取り、それに合った観光地の宿泊施設をお薦めするといったことが可能だ」(ISIDの荻原部長)。

 ISIDでは今回のシステムについて、まずはECサイトへの販売を想定。加えて、運用型広告の精度を高める目的でも応用を考えたいとする。「ユーザーが閲覧したWebサイトに何が書かれていたか、ユーザーがどんなブログをよく読むか、などを基に、属性情報に頼る現行の運用型広告よりも的確な内容の広告を提示できる」(ISIDの荻原部長)としている。

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