写真1●「CatchTheMoment」会場の様子
写真1●「CatchTheMoment」会場の様子
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 角川アスキー総合研究所は、2015年4月1日に「CatchTheMoment」と題するイベントを開催、エンターテインメントに関するTwitterの全量データ(全量ツイート)をリアルタイムに解析する技術を開発したことを発表した(写真1)。同技術を使ってツイートを読み解くことで、ユーザーの生活行動をリアルタイムに分析し可視化できるようにして、新しいマーケティングツールに育てることを目指す。

 例えば、4月1日のエンターテインメント関連のツイートを分析すると、1位の「エイプリルフール」以下、どのような単語がツイートに含まれているかを知ることができる。さらに、その単語が積極的な意味で使われるか否か、どれくらいリツイートされているか、複数単語間のランキング比較などが分かる。情報は30秒ごとに更新され、過去にさかのぼって特定の時点でのツイートランキングを知ることができる。将来的には、アラート機能を盛り込んだり、伝播経路分析もできるようにするという。「できれば、未来予測までできるようにしたい」(角川アスキー総合研究所 代表取締役専務の福田正氏)。

 同技術の開発には、米Twitterに加えて、全量ツイートの日本総代理店となっているNTTデータ、高速言語解析エンジンを持つ東京大学生産技術研究所の喜連川研究室が協力した。

 今回のイベントには、開発に携わる関係者が一堂に会し、今回の技術の意義を語った。主催者として冒頭の挨拶に立ったKADOKAWA 取締役会長/角川アスキー総合研究所 代表取締役社長の角川歴彦氏は、「コンテンツ量の爆発によって、見たいものにたどりつけない、今何が一番人気なのか分かりにくい、という状況になっている」と開発の背景を語り、今回の技術により実現される「リアルタイムのマルチコンテンツガイド」が必要だとした。

 続いて登壇したKADOKAWA・DWANGO会長の川上量生氏は、Twitterを起点とすべきだとした。川上氏は「Twitterはネットをツールではなく、住み家とする人たちが使っている」など、数あるソーシャルメディアの位置づけを明確にした上で、「Twitterがネットの実態に近い。世間の反応を調べたいときはTwitterだ」と、今回の技術のベースとしてTwitterを選んだ理由を語った。

 Twitter Japan執行役員の牧野友衛氏は、今回の開発のきっかけが角川会長との「“艦これ”の話題度はどれくらいのものか」という雑談から生まれたものだと振り返ったほか、最新のTwitterの利用状況やパートナー企業との連携例などを紹介した。

 NTTデータ ソーシャルビジネス推進室の横尾朋喜室長は、全量ツイートの総代理店の立場から、過去の分析例としてサッカーのFIFAワールドカップ時のツイートを分析した結果、選手ごとのファンタイプが類推できたことや、消費者が抱いている競合製品のイメージ調査に応用できたことなどを挙げた。

 東京大学の喜連川優教授は、「実社会の射影としてITメディアをとらえている」という研究方針を紹介したうえで、実社会を見る上でTwitterの分析が最適だとした。過去には、分析対象としてきたWebページやブログの分析では、世の中の要求に対して遅すぎて役に立たなかったが、Twitterならリアルタイムに実社会の変化が反映されるからだ。これまでの分析でも、2011年3月11日の東日本大震災後のツイート分析などを紹介、そこから見えてくる興味深いキーワードとその背景にある状況を解説した。

 利用料金を含むビジネスモデルは未確定だが、店頭やECでの販売施策、広告効果測定などのマーケティング活動への応用が見込まれており、今回のイベントに参加した企業など外部のパートナーとの協業を進めていく予定だ。