「ビッグデータ活用」のために個人情報保護法改正案に盛り込まれた「匿名加工情報」について、第三者への提供を目的としない社内利用にも適用する規定であることが明らかになった。2015年3月25日に開かれた衆議院内閣委員会で、高井崇志議員の質問に対して政府として向井治紀審議官が答弁した。

 同委員会で向井審議官は「匿名加工情報そのものは、作成した個人情報取り扱い事業者の内部でも個人情報を取得した際の利用目的にとらわれることなく、第三者に提供しなくても自社利用が可能 」と述べた。

 こうした点を明確にするため匿名加工情報の作成について定めた36条で、「個人情報保護委員会規則で定める基準の順守」や「加工方法などの情報の漏えいを防止」のほか、「作成した情報の項目の公表義務」「匿名加工情報の識別禁止」「安全管理措置」を規定。これらの規定は「第三者提供のみだけでなく、自社利用でもかかる」(向井審議官)と説明した。

 匿名加工情報は、いわゆる「ビッグデータ」を有効に活用するという名目で設けられた。個人情報を個人が特定できないように加工すれば、個人情報を提供した本人の同意がなくても、第三者に提供できる枠組みとして検討されてきた。

 関係者によると、第三者提供を前提としない匿名加工情報の規定は、2015年に入って一部企業の要望を受けて設けられたという。大手インターネット企業などでクッキーなどのデータを分析する際に、自社内で匿名加工情報として元に戻せない情報にして分ければ、本人同意を取り直したり、社内で個人情報として管理せずに済むといった狙いがあるものとみられる。

 ただ当初は、個人情報を社内保有や業務委託の際に一部匿名化する場合にも公表義務が課せられて、社内で匿名化して保管せずに個人情報のまま保管しなければいけなくなり、かえって企業には負担になるという懸念も出ていた。

 これに対して向井審議官は、個人データを一部加工し匿名化して別途保存する場合も、通常は別ID(識別子)と容易に照合できて個人情報になり得ると述べたうえで、全体としては個人情報になる場合が多いのではないかと説明。「匿名加工情報という場合は、(個人情報と)切り離されて安全管理措置が講じられているもののみが匿名加工情報なので、そういったものを利用するのは一種特殊な場合ではないかと考えられる」と述べた。

 そのうえで、匿名加工情報となって企業に余計な負担が生じないような運用が必要だとして、「企業の実態をちゃんとヒアリングして(委員会規則などを)定める必要がある」と答弁した。