「マイナンバーについては、刑事罰の規定など、一部誤解されているところがある」。内閣官房 社会保障改革担当室審議官の向井治紀氏は、2015年3月19日『民間企業のための「マイナンバー」カンファレンス』(日経コンピュータ主催)の講演で、漏洩時の罰則や企業に求める管理体制などを解説した(写真)。
個人がマイナンバーの提出が求められるのはどのようなときか。企業はいつからマイナンバーを収集すべきなのか。向井氏の講演を基にQ&A形式でまとめた。
個人編
【Q】マイナンバーはいつ、どんな形で交付されるの?
【A】2015年10月から、紙のカード(通知カード)で発送する。
2015年10月中旬から12月にかけ、簡易書留の形で世帯単位で発送される。
今後、会社から受け取る給与に限らず、原稿料や講演料など源泉徴収を伴う収入があれば、提供元にマイナンバーを提示する必要がある。
公的な給付を受け取る際の申請にも、氏名、住所と共にマイナンバーを提示する。「給付に関する書類を役所に出すときは、たいていマイナンバーの記載を求められると考えてほしい」(向井氏)。
市町村が条例で定めれば、独自の給付制度についても、マイナンバーの提示を求められることがある。
【Q】本人確認にも使える写真付きICカードは、どうすれば発行してもらえるの?
【A】通知カードと一緒に届けられる申請書を、写真を付けて返送すればよい。スマホ写真でも可。
申請に使う写真は、役所で撮らなくても、本人が用意すればよい。スマートフォンで写真を撮り、そのデータを送信できるアプリも用意するという。ただし「背景は無地にしていただきたい」(向井氏)とのこと。
カードの交付は2016年1月以降になる見通し。カードが完成すれば本人に通知書が送付されるので、市区町村の役所に取りに行く。役所は本人確認を行った上で、カードを交付する。
ちなみに、カード発行料は無料。「公的な本人確認書類の中で唯一、無償で交付されるものになる」(向井氏)という。
【Q】ICカードでインターネットバンキングは使えるの?
【A】銀行が対応すれば使える。
カードに埋め込まれたICチップを使った公的個人認証の機能は、民間向けにも開放される。企業が総務省に申請して承認を得られれば、インターネットバンキングに限らず、あらゆるサービスの認証に使えるようになる。
企業編
【Q】マイナンバーを含む個人の情報を漏洩させると、担当者やその企業に刑事罰が科されるって本当?
【A】「故意」でない限り、刑事罰は科されない。
例えば民間企業の人事部でマイナンバーを扱う従業員が、正当な理由なく故意に情報を漏洩させた場合、刑事罰が科される。
一方で、サイバー攻撃による漏洩など、故意でなく過失による漏洩には、刑事罰が科されることはないという。
マイナンバー関連法には、漏洩した企業に対する罰則も規定されている。ただし、たとえ従業員がマイナンバーの不正漏洩に手を染めても、それだけで会社が罰せられることはない。「会社ぐるみ、あるいは社長による故意の漏洩といったケースでないと、事業者に刑事罰は科されない」(向井氏)。
ただし、これらはいずれも刑事の話だ。民事でいえば、住所や氏名といった他の個人情報の漏洩と同様、故意の有無にかかわらず管理責任を問われ、損害賠償を請求される可能性があるという。
【Q】マイナンバーを含む情報の管理は、どこまで厳重にする必要があるの?
【A】一般的な人事給与システムと同じくらいと考えていい。
一般的な人事給与システムであれば、他の社員の情報を閲覧できないようにアクセス管理がされているはず。「これと同程度のセキュリティ、普通の企業が常識的に人事情報を管理するレベルがあればいい」(向井氏)という。
【Q】企業が従業員やアルバイトのマイナンバーを集められるようになるのはいつから?
【A】通知カードが配布された直後から。
マイナンバーによる所得の捕捉が始まるのは2016年1月1日から。「一番最初にマイナンバーが必要になるのは年賀状配達のアルバイトだろう」(向井氏)。
このため、例えば年始のアルバイトを募集する際には、採用の際など事前に当人のマイナンバーを聞き出す必要がある。2015年の段階で、準備行為としてマイナンバーを集めることは認められているという。
原稿料、講演料に対しても、2016年1月からはマイナンバーを聞き出すことが求められる。
従業員の所得に関連して税務署へマイナンバーの提出が求められるのは、常勤の会社員であれば2016年末の年末調整からで、それまでにマイナンバーを収集すればよい。ただし、2016年中に海外に転勤になるような場合、その時点で申告のためマイナンバーが必要になる。