写真●野村総合研究所、ビッグデータイノベーション推進部、上級研究員の神田晴彦氏(写真撮影:井上裕康)
写真●野村総合研究所、ビッグデータイノベーション推進部、上級研究員の神田晴彦氏(写真撮影:井上裕康)
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 「ビッグデータ分析では目的に適ったデータを選択しなければならない。データの量だけでなく質を高めることも大切だ」---。野村総合研究所(NRI)のビッグデータイノベーション推進部で上級研究員を務める神田晴彦氏は2015年3月17日、ITセミナー「データサイエンティスト・ジャパン2015」で講演した。企業のマーケティング活動の観点から、直近の事例を中心にビッグデータ活用の勘所を解説した。

 神田氏は冒頭で、「情報システム部門の約半数が、ビッグデータの概要を理解している」と、ビッグデータを取り巻く現況について説明した。ビッグデータの定義は3V、つまり、Volume(量)、Variety(種類)、Velocity(発生頻度、更新頻度)がともに多いことである。ユーザー企業は現在、ビッグデータを経営に活用し始める状況にある。

 ビッグデータの中でも、数値化されたデータではなく、文字情報(テキストデータ)が、社内で多くの容量を占めている、と神田氏は指摘する。顧客情報、顧客の行動履歴、SNS(ソーシャルネットワーキングシステム)の投稿、コールセンターの記録、---などである。これらのテキストデータをいかに活用するかが問われている。

 企業が抱える経営課題を解決する方法として神田氏は、「おもてなし」(個々の顧客に最適なもてなしを提供すること)と「うらおもてなし」(裏表がないこと、透明化と可視化、コンプライアンスの徹底)の二つが軸になると説明する。マーケティング施策においては、おもてなしを中心に方策を考える必要がある。

 講演の中盤では、化粧品メーカー、家電メーカー、通信販売、小売り、の四つのユーザー事例を紹介しながら、ビッグデータをマーケティングに活用する方策について解説した。

音声認識で顧客の相談内容をテキスト化して蓄積

 最初に紹介したユーザー事例は、化粧品メーカーの資生堂である。同社は、消費行動の多様化に合わせて、販売チャネルの多様化を図っている。百貨店でのカウンセラーによる対応だけでなく、Webを介した新チャネル「ワタシプラス(watashi+)」やWeb店舗「Beauty & Co.」などを用意している。