写真●国立情報学研究所(NII)の新井紀子教授(写真:井上 裕康)
写真●国立情報学研究所(NII)の新井紀子教授(写真:井上 裕康)
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 「ロボットがもし東大に入れなかったとしても、コンピュータがホワイトカラーの仕事を奪っていくのは間違いない。(東大合格を目指す)『東ロボ君』の大学入試偏差値が『55』になるか『60』になるかで、失われる仕事のタイプを予見することが可能だ」――。

 「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトを指揮する国立情報学研究所(NII)の新井紀子教授(写真)は2015年3月12日、「Cloud Days Tokyo/ビッグデータEXPO/スマートフォン&タブレット/Security/IoT Japan」の講演でこのように語り、「東ロボプロジェクト」の意義について説明した。

 コンピュータや人工知能がホワイトカラーの仕事を奪うことになるという問題意識は、「Race Against The Machine(邦題:機械との競争)」が2011年(日本では2013年)に発行されてベストセラーになることで、一般的になったとされる。しかし新井教授はそれより1年前の2010年末に「コンピュータが仕事を奪う」という著書を発行し、社会に警鐘を鳴らしていた。

 ところが新井教授の「コンピュータが仕事を奪う」は、全く売れなかったのだという。「当時は人工知能に対する期待が最も低い時期で、『コンピュータが仕事を奪う』は書店でもコンピュータ書の場所に置かれていて、注目を浴びなかった。これは必ず起こる未来なのに、政治家もビジネスマンも誰もそのことを認識していないことに強い危機感を覚えた」。新井教授は当時をそう振り返る。