写真●資生堂情報ネットワーク ネットワーク企画部長の毛戸 一彦氏(撮影:北森 幸)
写真●資生堂情報ネットワーク ネットワーク企画部長の毛戸 一彦氏(撮影:北森 幸)
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 「なんのためにモバイルを入れるのか。1年かけて、狙い・効果をとことん明確にした」――。資生堂情報ネットワーク ネットワーク企画部長の毛戸 一彦氏(写真)が、2015年3月6日に「Cloud Days Osaka/ビッグデータEXPO/スマートフォン&タブレット/Security/IoT Japan 2015」のKEYNOTE講演に登壇。「資生堂におけるモバイル活用の今~店頭業務を変革するビューティー・タブレット~」と題して、資生堂が1万1000人のビューティーコンサルタントに配布した「ビューティー・タブレット」(ハードウエアはiPad)について講演した。

 冒頭で毛戸氏は、まず資生堂について説明。同社は、主に化粧品を製造・販売している企業で、今年で142年目になる。売上高は7620億円で、比率は日本よりも海外の方が高いという。

 同社の中~高価格帯の化粧品は、ビューティーコンサルタントと呼ぶ美容部員が、店頭でカウンセリングしながら販売している。「ビューティーコンサルタントは、月に1~2度しか会社に来ない。ほとんど店頭と自宅の往復なので、業務を支援するモバイル機器は必須」(毛戸氏)という。

 実は、資生堂はこれまでも様々なモバイル機器を導入してきた。1990年には、東芝の「DynaBook J-3100SS」を使った「データポケット」を2000人の営業担当者に貸与。しかし、わずか4年で廃止した。「そもそも重さも2.7キロもあり、OSはDOS。あまりうまくいかなかった」(毛戸氏)。

 1996年には、東芝の「Libretto」を使った「コスモス」を、営業担当者300人に貸与したが、これも2年で廃止した。「まだインターネットがなかったので、モデムで電話回線につながなければならず、これもうまくいかなかった」(同)。2002年には、ビューティーコンサルタント全員に、携帯電話を貸与した。「これの進化版が、2013年に導入したビューティ・タブレット」(毛戸氏)という。

狙い・効果をとことん明確にした

 毛戸氏は、「なんのためにモバイルを入れるのか。1年かけて、狙い・効果をとことん明確にした」と語る。

 ビューティー・タブレットの狙いは4つある。1つは情報共有のスピード向上だ。「ビューティー・タブレットを導入することで、店頭の情報(クレームなど)を、素早く本社と共有できるようになった」(毛戸氏)。

 2つめは、店頭におけるサービスの向上。そのために、(1)口紅の色やアイラインなどをタブレットの画面でシミュレーションできる「メーキャップシミュレータ」、(2)顧客に合った商品を提案するための「ファンデーションファインダー」、(3)動画でわかりやすくスキンケアを説明する「スキンケアコンサルテーション」、という3つの応対業務アプリケーションを開発した。

 3つめは、ペーパーレス化によるコスト削減だ。「ビューティーコンサルタントは、1年で70冊、6000ページにも及ぶ商品カタログやマニュアルを持ち歩く必要があった。これを全部タブレットに入れた」(毛戸氏)。

 4つめは、ビューティーコンサルタントの業務の生産性向上。そのために、スケジュール、コミュニケーション、勤務実績報告、活動実績報告などの社内業務アプリケーションを開発した。「勤怠報告などの必須業務は、この中にある」(同)。

 導入後に、ビューティーコンサルタントに実施したアンケートでは、76%が「お客様とのコミュニケーションが高まった」、83%が「お客様の納得度が高まった」と回答するなど、導入後の効果は非常に高いという。