スペイン・バルセロナで開催中の「Mobile World Congress 2015」で、NECは異なる通信インフラをまたがる広域ネットワークをSDN(Software-Defined Networking)で柔軟に制御する「トランスポートSDN」のデモを展示した(写真1)。

写真1●トランスポートSDNコントローラーを使って、異なるドメイン/レイヤーにまたがった通信機器を一元的に制御。障害があった経路を自動的に迂回する様子などを見せた
写真1●トランスポートSDNコントローラーを使って、異なるドメイン/レイヤーにまたがった通信機器を一元的に制御。障害があった経路を自動的に迂回する様子などを見せた
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 通信インフラ分野では、2014年に目立ったNFV(Network Functions Virtualisation)関連の展示は一般的となり、目新しい展示は少ない。会期に合わせて、世界の先端を走る韓国のSKテレコムやNTTドコモなどがNFVの商用ベンダー調達を発表するなど、NFVが提案フェーズから商用フェーズに差し掛かっているからだろう。インフラベンダー各社の間では、次の通信インフラに向けた新たな提案が始まっている。今回のNECのデモもこれに該当するものだ。

 現在の通信事業者の広域ネットワークは、無線アクセス分野やパケット/光伝送分野など、異なるネットワークドメインごとに分かれて独立管理されている。さらにそのドメインの中でも、複数のレイヤーに分けた運用がなされており、異なるドメインやレイヤーにまたがった運用・管理ができていない点が課題という。

 NECが今回提案したトランスポートSDNでは、このような課題を解消する。異なる通信ドメイン/レイヤーを一元管理できる「トランスポートSDNコントローラー」を新たに用意している。具体的には、同社のモバイルバックホール製品「iPASOLINK 200」(写真2)、パケット伝送装置「DW7000 PTN」と光伝送装置「DW7000 WDM」を(写真3)、トランスポートSDNコントローラーで一元管理し、障害が発生した時などに自動的にネットワークの経路を変更するというデモを見せた。

写真2●コントローラーで一元管理できるようにした無線バックホール製品「iPASOLINK 200」
写真2●コントローラーで一元管理できるようにした無線バックホール製品「iPASOLINK 200」
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写真3●一元管理できるようにしたパケット伝送装置「DW7000 PTN」(上)と光伝送装置「DW7000 WDM」(下)
写真3●一元管理できるようにしたパケット伝送装置「DW7000 PTN」(上)と光伝送装置「DW7000 WDM」(下)
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 トランスポートSDNコントローラーでは、上記のネットワーク機器がそれぞれ備える管理機能「EMS」(Element Management System)を、コントローラー側で一元的に操作できるようにドライバーを用意した。これによってネットワーク資源を抽象化し、異なるドメインやレイヤーにまたがった仮想ネットワークを柔軟に作成したり、制御できる機能を実現している。

 今回はコントローラー側でNEC製品を一元管理できるようにしたが、商用化に当たっては、マルチベンダー体制に対応できるかどうかが課題になりそうだ。それぞれのネットワーク機器が備えるEMS機能をトランスポートSDNコントローラーで扱えるようにするには、個々の機器ごとにドライバーを開発する必要があるからだ。

 NECでは、幅広くコントローラーを利用してもらえるように、今回のコントローラーを「O3 Orchestrator suite」という名称にしてオープンソースとして公開した。オープンソースの力を借りて、同社の考え方を広めていくアプローチも見せる。

NEC、世界初、SDNの利用に向けて種類の異なるネットワークを統合できるソフトウェア技術を開発