写真●ワークスアプリケーションズの牧野正幸CEO(最高経営責任者)
写真●ワークスアプリケーションズの牧野正幸CEO(最高経営責任者)
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 ワークスアプリケーションズは2015年2月26日、一般の企業がマイナンバーに対応するために必要な機能を自社のERP(統合基幹業務システム)「COMPANY」の顧客以外にも無償で提供すると発表した。SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)として、2015年3月からα版を、夏に正式版を提供する。

 全ての企業へ無償提供する理由について、牧野正幸CEO(最高経営責任者)は「マイナンバーは社会全体にとっては良い制度だと考えるが、企業にとって当面は対応の負担が重い。その負担を軽減したいと考えた」と説明する(写真)。

 ワークスが提供するSaaS「マイナンバー管理プラットフォーム(My Number Keeping System=MKS)」は、個人番号情報や識別IDの管理機能と、マイナンバーを利用する法定帳票で構成する。ワークスでマイナンバーサポート責任者を務める伊藤秀也氏は、「一般企業の社員や家族のマイナンバーを管理するのに必要な機能を一通り持つ」と説明する。

 個人番号情報や識別IDの管理機能では、本人確認用の書類などの個人情報と個人番号とをひも付けるデータを残さない仕様にする。帳票類を作成した際にも、人事システムや給与システムなどに保管している個人情報は残さない。こうすることで、「仮にSaaSから情報が漏れたとしても、個人が特定されるリスクを回避できる」(牧野CEO)という。

 帳票は人事給与、会計分野を中心に100~150種類を用意する計画だ。「2016年から摘要が始まる税務分野で先行して提供し、適用が2017年からに遅れた社会保障分野の帳票を後から追加する」と伊藤氏は話す。個人番号の収集・登録は、利用企業の担当者が一括してファイルで登録したり、MKSに直接入力したりすることを想定している。

 企業の利用方法としては、(1)COMPANYの利用者はCOMPANYから直接、MKSの全ての機能を利用する、(2)自社や他社の人事システムを利用している場合は、MKSの個人番号管理機能のみを利用する、(3)ワークスが用意したMKS専用のWeb画面から利用する――の主に3パターンを想定している。

 「利用の申し込みや、サポートの受付は全てWeb経由で行うことになる」(牧野CEO)。

 ワークスがMKSの開発にかけた費用は5億円、期間は1年程度だ。COMPANYの利用者に対しては、従来から掲げる無償バージョンアップの範囲内の機能として提供される。

 「保守費を支払ってもらっている顧客企業向けに開発したものなので、無償で提供しても投資の回収に問題はない」と牧野CEOは説明する。「有償提供という選択肢もあったが、当社は新ERPの『HUE』の投入を控えており、営業人員をマイナンバー対応に割けないと判断して、無償提供を決めた」(牧野CEO)と強調した。